もし、大阪など関西地方で収益物件(一棟賃貸マンション・アパート)を保有している場合、知っておいた方が良い大阪独特の商慣習や不動産用語があります。不動産の取引は地元に深く密着しているので、地方によって商慣習が違ったり、使われる用語も違うことが多いです。
ここでは、大阪・関西独特の商慣習や用語についてまとめてみました。
収益物件の敷金持ち回り(大阪方式・関西方式)
収益物件(一棟賃貸マンション・アパート)の部屋を貸すとき、敷金を預かる事が多いと思います。
最近は住居系ではなかなか敷金が取れないケースも出てきましたが、店舗などの場合はまだまだ高額な敷金や保証金を取るケースが多いようです。
敷金は入居者やテナントから預かっているものですから、退去があった時は当然入居者に返還します。そのため売却時には、次の所有者に預かっている敷金を引き継ぐのが普通です。ところが、大阪を中心とする関西地方では、次の所有者に引き継がないことが一般的です。
これを「敷金持ち回り」や「大阪方式」「関西方式」と呼ばれています。
この習慣は関西独特のもので、関西以外の人が大阪の物件を購入するときなどに、事前にきちんと説明せずに取引を進めてよくトラブルになっています。また、大阪の人が関西以外の地方に収益物件を持っていて売却する時に、大阪のルールを押し付けようとしてトラブルになることも多いです。
売主の出身地や居住地ではなく、物件の所在地で商習慣は変わってきます。
もちろん、関西の人同士での取引でも、事前にきちんと言わないとトラブルになることが多いので、収益物件の売却時は仲介会社に敷金の取り扱いをどうするのかを予め決めて、買主にも事前に告知するように促してください。
固定資産税日割り精算の起算日は4月1日
固定資産税は、毎年1月1日付けの所有者に4~5月ごろ納税通知が来ます。
たとえ売却しても、1月1日時点での所有者が納税義務を負います。それだと売却後の分までも売主が払うのは不公平ということで、不動産取引の慣行で日割り精算をすることになっています。
ここで問題になるのが、毎年の固定資産税は、いつからいつまでの分なのかということです。
そもそも日割り精算は法律で決まっているわけではなく、不動産取引の商慣習として行われています。そのため、こちらも地方によってルールが違います。
東京など東日本では、1月1日を起算日にして計算します。
例えば4月25日に所有権を移転する場合、1月1日から引き渡し前日の4月24日までの分を売主が、4月25日から12月31日までの分を買主が負担するように計算して決済日に精算します。
ところが、大阪など西日本では4月1日を起算日にして精算します。
そのため、先ほどと同じ4月25日に所有権を移転する場合は4月1日から4月24日までを売主が、4月25日から12月31日までを買主が負担するように計算します。
ちなみに大阪で1月から3月に取引する場合は、前年の4月1日を起算日にするので、引き渡しの日から3月31日までの分を日割り精算して売主に払いますが、4月に入って翌年度の固定資産税の納税通知書が1月1日時点の所有者だった売主に来ますので、その金額を全額買主が売主に払うことになります。
この固定資産税日割り精算の起算日ルールは物件所在地で決まりますので、東京の人が大阪で所有している収益物件を売却する時は、大阪の商慣習が適用されます。
モータープールは駐車場のこと
大阪の街を歩いていて、月極の駐車場を見つけたら看板を見てください。
「◯◯モータープール」と表記されているのを結構見ると思います。
大阪の人は駐車場のことをモータープールと呼ぶことはみんな知っていますが、他の地方の方は最初は何のことか分からないという人が多いようです。ただ、最近は大阪でもモータープールという表現は少しずつ使われなくなりつつあります。
モータープールという言葉の由来は諸説ありますが、戦後進駐軍が車の置き場をモータープールと呼んだのが大阪で広まって使われるようになったというのが有力な説のようです。大阪でモータープールという看板を見かけたら、それは駐車場のことであると覚えておいてください。
文化住宅は単なる古いアパートのことではない
大阪では、古い木造のアパートを「文化住宅」「文化アパート」などと呼ぶことがあります。最近の若い人は、とりあえず古い木造アパートを文化と呼びますが、正確にはこの使い方は間違っています。
元々の古いアパートには、風呂はついていないし、トイレも共同だったりするところも少なくありませんでした。そういう時代に、各世帯個別に、トイレと風呂がついた画期的なアパートが生まれました。文化的な生活が出来る住宅ということで、文化住宅、文化アパートなどと呼ばれるようになりました。
ただ、これは大阪など関西独自の言い方のようで、東京など他の地方では使われないようです。
ちなみに、文化住宅が建てられたのは昭和40年代~50年代の初め頃までです。築50年くらい建っていますから老朽化も進み、建て替えが行われています。そのため古い文化住宅を持っているオーナー様から、こんな古い物件が売れるのかというお問い合わせをよくいただきます。もちろん状態にもよりますが、高齢者の中には新しいアパートより文化のほうが居心地が良いとこちらを選ばれる方もいます。
ただし、賞味期限切れの日は近づいているので、古い文化住宅を保有している方は早く売ったほうが良いかと思います。
敷金の敷引き
最近は敷金ゼロという賃貸物件も増えてきましたが、新築の物件などは敷金と礼金をきちんと取っている物件も多いと思います。
敷金は入居者から預かる保証金のようなもので、退去時には全額返還します。
一方で、礼金は入居時にオーナーが入居者からもらうお金で、返済義務はありません。
これが、敷金と礼金の定義です。
ところが、以前の大阪では敷金、敷引きという考え方が一般的でした。
これはどういうものかというと、例えば敷金を30万円預かるとします。退去時は敷引きと言って例えば15万円引いて、15万円を入居者に返還するというようなものです。敷引きは、修繕費に充てるという名目だったのでトラブルの原因でした。
賃貸住宅の原状回復に関するトラブルが増えたので、1998年に国土交通省から「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が公表されました。そのため、契約書に最初から敷引きとして無条件に引くのは、違法ではないかと裁判も起こったりしました。
判決では違法ではないということになりましたが、トラブルが多いことから敷金、敷引きという手法は賃貸契約の現場から少しずつ消えてきったのです。しかし、古くから長年住んでいる入居者の中には、以前の賃貸契約を自動更新でそのまま続けている人も少なくありません。契約書には敷金、敷引きと記載されているので、当時を知らない若い不動産業者の社員も意味を知らないことがあります。
そのため収益物件売却時の精算明細をもらう時は、間違って計算していないのかを確認するようにしてください。
走り屋、ランナー、走ってるおっさん・・
大阪の無免許不動産ブローカーのこと
不動産の売買や仲介を業として行うためには、宅地建物取引業の免許が必要です。しかし、中には免許を持たずに不動産の売買を行おうとする人がいます。これは違法なので、もしあなたが収益物件を売却しようと思っているなら、無免許の不動産ブローカーは絶対に相手にしないようにしてください。
かなりの割合で、トラブルになっているようです。
この無免許の不動産ブローカーの呼び名も大阪では、独特の呼び方があります。もちろん無免許ブローカーという言い方もしますが、「走り屋」「ランナー」「走り」「走ってるおっさん」などと呼ぶのも一般的です。
これらの呼び方に共通してるのは、みんな走ってるということです。無免許なので、せわしく走り回っている人が多いのかもしれません。少々、侮蔑的な意味もあると思います。
とにかく、素人を食い物してトラブルも多いので、絶対に相手にせず収益物件を売却する時は宅地建物取引業の免許を持った事業者に依頼するようにしてください。