保有している収益物件(賃貸マンション・アパート)を売却するとき、出来るだけ高く売却したいと思うのが普通です。我々仲介会社もご依頼いただくオーナー様の意向を受けて、出来るだけ高く売却しようと頑張るのが普通です。
しかし、中には少々買い叩かれてでも、今すぐ売却した方が良い収益物件も多数存在します。
その背景には、今後予想される少子高齢化による人口減少やコンプライアンスの強化で、今までなら普通に融資が出ていた物件に対し、金融機関が融資を出す対象を絞り込んできたことが原因となっています。
もし、次に該当する物件をお持ちでしたら、まだ出口が完全に塞がれていない今のうちに少々安くなっても売却した方が良いのではないでしょうか?
市街化調整区域にある収益物件
「市街化調整区域」は、都市計画法に基づいて定められた区域の一つで、市街化を抑制することを目的としています。そのため、新たな建築や開発が制限されており、土地の利用には厳しい規制があります。
原則として、新規の住宅やアパートなどの建築は認められません。
しかし、「市街化区域」に指定される前から建物が建っていた、いわゆる既存宅地と言われるエリアなどで賃貸マンションやアパートが建てられてる例は散見されます。また、その地域の諸事情を勘案して特別に建築確認が下りたものもあります。そのためきちんと建築確認申請が下りてるので、資産価値があると思っているオーナー様も多いのではないでしょうか?
しかし、そういう物件であっても近年は金融機関の見る目は厳しくなっています。
以前は、普通に融資を行っていた金融機関が、「市街化調整地域」にあるという理由で融資を行わなくなるケースが増えました。そのため、今後は売りたくても売れなくなるケースが増えると思います。今でしたら、まだ融資を出す金融機関があるかもしれません。
そのため、早いうちに売却したほうが良いと思います。
非線引き区域(未線引き区域)にある収益物件
「非線引き区域」とは、都市計画区域の中で市街化区域と市街化調整区域とに区分されていない場所のことです。以前は未線引き区域と言われていましたが、今は「非線引き区域」と言われています。
最近は、各自治体などで用途地域が載っている都市計画図が、公開されているところが多いので調べることが出来ます。「非線引き区域」は市街化調整区域とは違い、建築確認申請が普通に下ります。
しかし、地方では今後人口減少が予想される中で、非線引き区域は市街化区域に比べ更に人口減少が著しいと考えられています。そのため、最近は非線引き区域にある収益物件への融資を断ったり、非常に低い評価しか出さない金融機関が増えています。
今はまだ普通に出している金融機関もあるので、今のうちに売ってしまったほうが良いのではないでしょうか?
居住誘導区域外にある収益物件
今後、地方都市では、少子高齢化による人口減少の影響を一番受けると予想されています。
そのため、2014年にいわゆるコンパクトシティーを推進するため、都市再生特別措置法が成立しました。この中で行政と住民や民間事業者が一体となったコンパクトなまちづくりを促進するため、立地適正化計画制度が創設されました。
この立地適正化計画の中で、中心部に都市機能を集中させるために制定されたのが「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」です。
この中で「居住誘導区域」から外れた場所、つまり「居住誘導区域外」にある賃貸マンションやアパートは、今後は需要が大きく減少する可能性があります。そのため、一部の金融機関は「居住誘導区域外」にある物件への融資を渋るところが出てきました。今のところ、「居住誘導区域外」の物件であっても普通に流通していますが、今後は売りにくくなる可能性があります。
そのため、売れるうちに売却してしまうのが良いのではないでしょうか?
土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域にある収益物件
最近、異常気象による災害が増えています。大雨や台風の後に、土砂崩れで下の家が埋もれて住んでる方が亡くなられたというニュースはよく見ます。そこで、各自治体では土砂災害への警戒を呼びかけるため、ハザードマップで「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」の情報を公開しています。
ちなみに、これらの区域は一般の人が思っているよりも遥かに多く、大阪府内では令和6年3月26日までに「土砂災害警戒区域」を8,350箇所、「土砂災害特別警戒区域」を7,750箇所指定しています。
最近では、これに掛かっている区域の不動産には、融資をしないという金融機関も増えてきました。
傾斜地に収益物件を保有している方は、今のうちに売却した方が良いと思います。
津波災害警戒区域、津波災害特別警戒区域にある収益物件
2011年の東日本大震災以降、津波に対する警戒が強まっています。そこで今後、大きな地震が発生した時に津波災害が予想されるところが、「津波災害警戒区域」に指定されています。
現在は、「津波災害特別警戒区域」に指定されたところは、開発に制限が掛かっています。「津波災害警戒区域」に指定されても、開発行為や建築物等の建築は制限されておりません。
しかし、一部の金融機関では、「津波災害警戒区域」にある収益物件への融資を行わないところが出てきています。今後、この動きが強くなることが予想されるので、「津波災害警戒区域」にある収益物件は早いうちに売却したほうが良いでしょう。
旧耐震基準(旧耐震)の収益物件
「旧耐震」とは、昭和56年(1981年)5月51日までに建築確認申請をした物件のことを言います。ちなみにこれは建築確認申請をした日付で区分されており、建物が竣工した日ではありません。実際には、1981年末~1982年初頭までに建築された建物は、「旧耐震」の可能性があります。
「旧耐震基準」では震度5までの地震に耐えるよう設計されていますが、それでは不十分だと1981年に建築基準法が改正され、震度6強~7程度の地震でも耐えれるよう耐震基準が厳しくなりました。最近、大きな地震が各地で発生していますが、倒壊する建物の多くは「旧耐震」の建物となっています。そのため、多くの金融機関では、「旧耐震」の建物への融資をしなくなりつつあります。
こういう物件を保有している場合も、早く売却したほうが良いでしょう。
違反建築、既存不適格の収益物件
建築基準法では、建物の建築に関して様々制限を設けています。
それに適合した設計をして建築確認申請をして、それが通れば建築を行い申請通り建築されているかを検査して、問題なければ検査済証が発行され建物を使用するという決まりになってます。しかし、少し古い収益物件、特に大阪などでは検査済証を取得していないものが数多くあります。これは単に最後の完了検査を受けてないだけではなく、申請通りの建物が建っていないことが大半です。いわゆる「違反建築」です。大阪では、容積率が制限値からオーバーしている違反が多いようです。
また、建築当時は法令的に問題がなくても、その後の法改正で現在の基準からは外れている建物も少なくありません。これを、「既存不適格建築物」と言います。
こういう収益物件でも、以前であれば普通に融資が付いていました。しかし、最近は金融機関も厳しくなり、「違反建築」や「既存不適格」の収益物件には融資をしないところが増えました。
こちらも早めに売却したほうが良いと思います。
さいごに
他にも、今すぐ叩き売った方が良い収益物件の条件はたくさんありますが、代表的なものを紹介しました。
ご自身の収益物件が今すぐ売ったほうが良いのか、しばらく保有したほうが良いのかはお問い合わせいただければ簡単にお答えできると思いますので、お気軽にご相談ください。