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収益物件の売却とは?
売却の基本からメリット・デメリット、手順を徹底解説!

収益物件の売却とはのイメージ 売却お役立ち情報

収益物件の売却を検討していて、「収益物件を売却するメリットは?」「高く売るためのポイントは?税金はかかる?」など、疑問を持っている方も多いでしょう。

売却に関する基礎知識がないまま進めてしまうと、良い条件での取引チャンスを逃すことがあります。また、適切な資金計画を立てられず、売却活動が停滞してしまう可能性も考えられるため注意が必要です。

この記事では、収益物件を売却するメリットやデメリット、高く売るためのポイント、売却にかかる費用や税金について詳しく解説します。

収益物件の売却を考えている方は、参考にしてください。

収益物件の写真
収益不動産売却査定サイト

収益物件の売却とは?

マンションやアパートなどの収益物件を売却することで、利益を得られる可能性があります。収益物件の売却方法には、「仲介」と「買取」の2つがあり、それぞれで特徴が異なります。

仲介とは、売主の依頼を受けた不動産仲介会社が買主を探す方法です。仲介で売却する場合のメリットとデメリットは、以下のとおりです。

不動産投資で不労所得を得るイメージ

仲介で売却するメリット

・買取よりも売却価格が高い

・市場のニーズを把握できる

仲介を通じて不動産を売却する場合、市場価格で取引されるため、買取よりも高値での売却が可能です。通常、買取価格は仲介価格よりも2割〜3割程度低い傾向にありますので、仲介を選ぶことで数百万円以上高値で売却できる可能性があります。

仲介の場合、不動産会社との間で媒介契約(専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約)を結び、不動産会社が中心となって販売活動を行います。買主との交渉も不動産会社が行うため、売主の負担は比較的少ないです。また、不動産会社との打ち合わせや販売活動の進捗報告を通じて、市場のニーズや動向を把握することもできます。

仲介で売却するデメリット

・仲介手数料が発生する

・売却に時間がかかる場合がある

・周囲に売却が知られる可能性がある

・ハウスクリーニングなどが必要な場合がある

仲介の場合、物件の売買が成立した際には、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。仲介手数料は、売買の成功報酬であり、宅地建物取引業法によって上限(速算式:売買価格×3%+6万円+消費税)が定められています。例えば、売買価格2,000万円の場合、仲介手数料は72万6,000円です。仲介手数料が支払われることで手取り収入が減少することを理解しておく必要があります。

また、仲介で物件を売却する場合、すぐに現金化することが難しいのが一般的です。通常、売却には3ヶ月〜6ヶ月ほどかかるとされており、物件によっては1年以上かかることもあります。そのため、急いで現金を必要としている場合には、仲介での売却は適していない場合があります。

仲介を利用すると、不動産情報ポータルサイトや住宅情報誌、新聞の折込広告、ポスティングチラシなど、さまざまな媒体に物件情報が載り、知人や友人、近隣住民に売却が知られる可能性があるので注意が必要です。

さらに、物件の状態によっては、売却前にハウスクリーニングや修繕、リフォームなどが必要になり、費用がかかることがあります。

一方、買取とは不動産会社が物件を直接買い取る方法です。買取を利用する場合のメリットとデメリットは、以下のとおりです。

買取のメリット

・スピーディーに現金化が可能

・仲介手数料がかからない

・ハウスクリーニングやリフォームが不要

・内覧対応が不要

・周囲に売却を知られる可能性が低い

買取は不動産会社が直接物件を買い取る方法であり、最短で1週間以内に現金化できる場合があります。そのため、急いで現金を必要としている方にとっては大きなメリットです。仲介手数料が不要で、ハウスクリーニングやリフォームの必要もないため、コストを削減できます。また、リフォーム業者の選定や内覧日の調整、何度も掃除や片付けをする手間が省ける点もメリットとなります。

さらに、買取の場合は不動産情報ポータルサイトや住宅情報誌、新聞の折込広告、ポスティングチラシなどに物件情報が掲載されないため、周囲に売却を知られるリスクが低いです。

買取のデメリット

・買取価格は市場相場より2割〜3割低い

・物件の状態によっては買い取ってもらえない

買取価格は市場相場より2〜3割低くなるのが一般的なので、仲介で売却するよりも手元に入る金額が少ない可能性があります。例えば、仲介での相場が3,000万円の場合、買取価格は2,100万円〜2,400万円程度になります。仲介手数料などは不要ですが、売却価格が低くなる点には注意が必要です。

また、すべての物件が必ず買い取ってもらえるわけではありません。買取業者によって基準が異なり、物件の種類や状態によっては買い取ってもらえないこともあります。特に、再建築が難しい物件、老朽化や管理不足で著しく状態が悪い物件については注意しましょう。

このように、仲介と買取では特徴が異なります。それぞれのメリットとデメリットを理解し、自分に合った方法を選択することが大切です。

収益物件とはなにか?

収益物件とは、個人や法人に貸し出して毎月家賃収入(収益)を得ることを目的とした物件のことです。また、家賃収入だけでなく、売却して値上がり益(売却益)を得ることも可能です。

こうした家賃収入や売却益が期待できることから、副収入や老後の資金対策を目的に収益物件を所有する人が多くいます。

また、地主や経営者、資産家が節税対策を目的として収益物件へ投資したり、一棟マンションやアパートを建築したりすることもあります。

収益物件の主な種類と特徴は、以下のとおりです。

収益物件の種類特徴
居住系不動産ワンルームマンション、ファミリーマンション、アパート、戸建て、シェアハウスなど、住むことを目的とした物件。世の中に非常に多く出回っている。情報収集がしやすく、良し悪しの判断やニーズの予測がしやすいことに加え、景気の影響を受けにくいという特徴を持つ。物件によっては安価で手が出しやすいのも魅力で、不動産投資の経験が浅い方にも人気がある。
オフィス系不動産オフィスビルなどの貸事務所。大企業、中小企業、個人事業主などが主な借主。主要エリアへの近さやアクセスの良さ、セキュリティの充実、一定の広さが求められる。1度入居が決まると、長期契約となることが多いのが特徴。ただし、住居用不動産と比べて価格が高くなりやすく、景気の影響を受けやすい。
テナント系不動産店舗や倉庫、駐車場などの不動産。飲食店、アパレル、ドラッグストア、コンビニ、クリニックなど、さまざまな商業施設が主な借主。集客を重視する借主が多いため、立地が重要視される。また、飲食店などは構造や仕様(排水、排気、電気など)も重要。1度入居が決まると、長期契約となることが多いのが特徴。ただし、商業施設の経営状態によっては、早期の撤退なども考えられる。また、景気の影響を受けやすい。

収益物件は高額なため、不動産投資ローンを利用することが一般的です。近年、会社員が収益物件への投資を始めるケースも増えています。

なお、収益物件は「投資物件」「投資用不動産」「収益不動産」とも呼ばれます。

居住系不動産の種類

個人投資家が収益物件を購入する場合、多くは居住系不動産を選択します。情報が得やすく、価格も比較的手頃な物件が多く存在するためです。

居住系不動産には、ワンルームマンション、一棟マンション、一棟アパート、戸建てなどの種類があり、それぞれで特徴が異なります。特徴やメリット・デメリットは、以下のとおりです。

ワンルームマンションのメリット

・他の物件に比べて価格が手頃

・幅広い選択肢がある

・修繕費用が少なく済む

・流動性が高く売却しやすい

ワンルームマンションは、一棟マンションやアパートに比べて価格が安く、購入しやすいのが特徴です。特に中古物件は、手頃な価格で入手できることがあります。他の物件と比べて面積が小さいため、リフォーム費用や修繕費用を抑えることが可能です。また、流動性が高いため、早期の売却が期待できます。

ワンルームマンションのデメリット

・空室が発生すると家賃収入が途絶える可能性がある

・リフォームや設備変更の自由度が低い

ワンルームマンションの場合、空室が発生すると家賃収入が途絶えるリスクがあります。入居者がすぐに見つかれば良いですが、空室が続くと経済的な損失が大きくなるため注意が必要です。また、ワンルームマンションの室内は一定程度自由にリフォームが可能ですが、共用部や外装については他のオーナーもいるため、自由に変更することができません。一棟マンションや一棟アパートとは異なり、リフォームや設備変更の自由度が低いことを理解しておく必要があります。

一棟マンションのメリット

・多くの家賃収入を得られる

・空室リスクを軽減できる

・リフォームや設備変更の自由度が高い

・減価償却期間が長い

一棟マンションでは、部屋数が多いため、多額の家賃収入を得ることができます。例えば、10室あるマンションで1室の家賃が10万円の場合、満室であれば月に100万円、年間で1,200万円の家賃収入が見込めます。また、数室の空室が発生しても家賃収入が途絶えることはないため、空室リスクを軽減可能です。さらに、他にオーナーがいないため、室内や共用部分のリフォームや修繕、設備変更が比較的自由に行えます。一棟マンションは、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造で建てられていることが多く、法定耐用年数が47年と長いため、長期間にわたり減価償却が可能です。

一棟マンションのデメリット

・購入費用が高い

・維持管理に多額の費用がかかる

・買い手が見つかりにくい

一棟マンションは、ワンルームマンションや一棟アパートと比べて購入費用が高額です。不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の「収益物件市場動向マンスリーレポート2024年5月期」によると、一棟マンションの平均価格は1億7,909万円です。一方、ワンルームマンション(区分マンション)の平均価格は2,030万円、一棟アパートは7,861万円となっています。さらに、一棟マンションではすべての部屋と建物全体の維持管理が必要になるため、維持管理費用が高額です。また、価格が高いため流動性が低く、ワンルームマンションと比べて買い手が見つかるまでに時間がかかる傾向があります。

一棟アパートのメリット

・空室リスクを分散できる

・一棟マンションより購入費用が安い

・高い利回りが期待できる

・リフォームや設備変更の自由度が高い

一棟アパートは、複数の部屋があるため空室リスクを分散できます。1室が空室になったとしても、家賃収入がゼロになることはありません。一棟マンションと比べると購入費用を抑えられ、利回りも高い傾向があります。不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の「収益物件市場動向マンスリーレポート2024年5月期」によると、一棟アパートの平均利回りは8.07%、一棟マンションは6.93%、ワンルームマンション(区分マンション)は6.93%でした。さらに、他にオーナーがいないため、リフォームや修繕、設備変更などの自由度が高い点もメリットです。

一棟アパートのデメリット

・災害リスクに注意が必要

・維持管理費用が高額

・売却に時間がかかる

一棟アパートは一般的に購入費用が高額なため、複数物件を展開するのはワンルームマンションよりも難易度が高いです。また、マンションほどの耐震性や耐久性がないため、地震などの災害リスクには注意が必要です。建物全体の管理が必要であるため、高額な維持管理費用がかかります。さらに、買い手が見つかりにくいため、売却には時間がかかる傾向があります。

戸建てのメリット

・入居期間が長くなりやすい

・競合が少ない

・共用部の維持管理が不要

・土地を所有できる

戸建ての入居者は主にファミリー層であり、子どもの学校区などの問題から入居期間が長くなる傾向があります。そのため、安定した家賃収入が期待できると同時に、入居者募集にかかる費用を節約可能です。また、マンションやアパートと比較して賃貸物件が少ないため、競合が少なく入居者を確保しやすいメリットもあります。さらに、共用部の維持管理が不要です。土地を所有できるため、将来的に建て替えなどの選択肢も検討できます。

戸建てのデメリット

・修繕費が高額になることがある

・空室になると家賃収入が途絶える

・融資を受けづらい

修繕費が高額になる場合があることは、戸建てのデメリットです。特に、シロアリ被害や雨漏りなどの問題がある場合、大規模な修繕が必要になることがあります。さらに、建物が古く耐震改修工事が必要な場合も、高額な費用がかかることがあります。一般財団法人日本建築防災協会の「耐震改修工事費の目安」によると、木造住宅(平屋)の耐震改修工事費の中央値は140万円で、2階建ての場合は186万円です。

また、戸建ては部屋数が少ないため、空室になると家賃収入が途絶えるリスクがあります。 収益性が低く法定耐用年数が短い(木造は22年)ため、融資を受けるのが難しいとされています。

収益不動産売却査定サイト

収益物件の特徴

収益物件の利益には「家賃収入(インカムゲイン)」と「売却益(キャピタルゲイン)」の2つがあります。家賃収入や売却益を最大化し、取得コストや維持管理コストを抑えることで、利益率を高めることが可能です。

収益物件は、種類、立地、築年数、広さ、設備、周辺環境、市場動向などにより、賃料や売却価格が変わります。例えば、同じ築年数や広さ、設備の物件でも、都市部と地方では賃料や売却価格に大きな差が生じることがあります。

以下は、不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の「収益物件市場動向マンスリーレポート2024年5月期」における、区分マンション、一棟アパート、一棟マンションの地域別の平均価格です。

首都圏北海道東海中国・四国九州・沖縄
区分マンション2,349万円875万円1,131万円791万円1,041万円
一棟アパート8,373万円4,509万円6,506万円4,169万円6,400万円
一棟マンション2億552万円1億4,487万円1億3,623万円1億1,190万円1億7,070万円
出典:不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の「収益市場動向マンスリーレポート2024年5月期」

また、管理費、修繕費、リフォーム費用、税金、管理委託手数料などの維持管理コストも収益性に影響を及ぼします。

そのため、収益物件を選ぶ際は、将来的な収益性や物件の価値も考慮することが大切です。また、売却を検討する際には、市場動向を確認し、適切なタイミングを見極めることで収益性が高まることもあります。

物件を所有する間の利回りや出口戦略(売却)を踏まえて収益計画を立て、コストを最適化し、投資・運用を行うことで、より多くの利益が期待できます。

参考までに、以下は一般財団法人日本不動産研究所の「第50回不動産投資家調査(2024年4月現在)」における、主な収益物件の期待利回りです。

・ワンルームマンション:3.8%〜3.9%

・ファミリー向けマンション:3.8%〜4.0%

・外国人向け高級賃貸住宅:4.0%

・商業店舗:3.4%〜3.5%

・物流施設・倉庫(シングルテナント型):3.8%〜4.5%

・物流施設・倉庫(マルチテナント型):3.8%〜4.5

・宿泊特化型ホテル:4.3%

※東京の場合

※物件ごとの条件は資料をご確認ください。 収益性やコストなどを把握し、物件の売買や運用を行うことが大切です。

選ばれる収益用不動産の特徴

収益物件を売却する際には、買主の視点で物事を考えることも大切です。「どのような物件が需要があるのか?」「買主は何を重視するのか?」などを考えることで、売却物件が一定の需要が見込めるかどうかや、良い条件で売却できる可能性を予測しやすくなります。

一般的に、収益物件を選ぶ際には、以下のポイントに注目します。

立地

立地は、収益物件の資産価値や賃貸需要に大きく影響するポイントです。例えば、主要駅から近い、人気の高いエリアに位置する、商業施設や学校が近いといった物件は人気が高い傾向があります。

築年数

買主にとって、築年数も物件を選ぶ際の重要なポイントです。築年数が古い場合、旧耐震基準の可能性があり、災害リスクへの対策で高額な費用がかかることがあります。また、法定耐用年数の残存年数が短い場合は、減価償却期間が短く、金融機関から融資を受けるのが難しい可能性があります。

設備

物件の設備が比較的新しく充実している場合、買主にとって魅力的なポイントとなり、良い条件で売却できる可能性があります。一方で、設備が古い場合は、修繕や交換に伴う費用が発生しやすいため敬遠されることがあります。インターネット無料、宅配BOX、TVモニター付インターホン、エアコン、追い焚き機能、温水洗浄便座など、需要の高い設備を事前に把握しておくことが大切です。

維持管理

適切な維持管理が行われている物件は、市場で高い評価を受けやすくなります。物件の状態が良好で、入居者の満足度も高いことが期待されます。また、定期的なメンテナンスにより余計な修繕を避けることも可能です。一方、適切な維持管理が行われていない物件は、建物の状態が悪く、購入後に高額な修繕費が発生するリスクがあります。

価格

買主は価格が適正かどうかを判断します。相場とかけ離れた価格設定だと、買主を見つけるのに時間がかかる可能性があります。立地や設備、利回りなどを類似物件と比較し、適正な価格を設定することが大切です。

利回り

一般的に、利回りが高いほど買主に好まれ、良い条件での売却が期待できます。利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があります。

・表面利回り:一般的に「利回り」と言う場合は表面利回りを指します。計算式は「年間の家賃収入÷物件価格×100」で、コストは考慮されていません。

・実質利回り:コストを考慮した、より現実的な利回りです。計算式は「(年間の家賃収入−年間のコスト)÷(物件価格+購入時のコスト)×100」です。

売却する物件の利回りが類似物件と比較して高いかどうか、事前に確認しておきましょう。

収益物件を売却するメリットとは?

マンションやアパートなどの収益物件を売却するメリットには、利益と損失を確定できること、売却益を他の用途に活用できること、投資用ローンを完済できることなどがあります。

これらのメリットを理解することで、所有する物件を売却すべきかどうか判断がしやすくなります。

ここでは、収益物件を売却するメリットについて詳しく見ていきましょう。

利益と損失を確定できる

収益物件を売却するメリットは、利益と損益を確定できることです。

収益物件を所有している間は、家賃収入が入ることで利益が増える可能性があります。また、物件の価値が上がれば、高値で売却することもできます。

しかし、一方で空室が発生して家賃収入が途絶えたり、維持管理費がかさむことで損失が出るリスクもあります。

収益物件を運用している間は、将来の損益を正確に予測することは困難です。これまでに利益を積み重ねていても、将来の損失が大きくなる可能性があります。

収益物件を売却することで、その時点までの利益や損失を確定させることが可能です。

そのため、「これから損失が発生して、これまでの利益がなくなるかもしれない」といった不安から解放され、利益や損失の変動に悩むことがなくなります。

投資において、利益確定や損切りは非常に重要です。

収益物件の売却は、次の投資計画を立てやすくするための一つの手段となります。

売却益を他の用途に使える

収益物件を売却するメリットの一つは、売却益を他の用途に活用できることです。

売却によりまとまった資金が手元に入れば、不動産投資をはじめ、以下のような使い道があります。

・株式や債券など、他の金融商品に投資する

・老後資金として貯蓄する

・子どもの教育費や留学費用に充てる

・新たな収益物件の頭金に使う

・マイホームの購入資金に充てる

・法人設立や事務所の移転費用に使う

・家族との海外旅行に使う

・新しい車の購入資金に充てる

・自宅のリフォーム費用に充てる

・寄付する

・家具や家電の購入に使う

このように、さまざまな用途に自由に使うことができます。これまで手元資金が不足していたために後回しにしていたり、取り組めなかったことを始める良いきっかけにもなります。

資金不足で手つかずの事柄や、急な資金需要が生じた場合には、収益物件の売却を検討してみてもよいかもしれません。

損失が生じるリスクがなくなる

損失が生じるリスクがなくなることも、収益物件を売却するメリットの一つです。

収益物件の運用には、空室リスクや家賃滞納リスク、災害リスク、金利上昇リスク、修繕リスクなど、さまざまなリスクが伴います。

それまで順調に運営していたとしても、急に空室が発生し、長期間入居者が見つからないかもしれません。また、入居者がいても家賃滞納が起こり、収入がゼロになる可能性も考えられます。さらに、大地震が発生し、保険では補えない高額な修繕費用が発生する可能性もあります。

損失リスクは、経済的なダメージだけでなく、心理的な負担も大きいため注意が必要です。

「空室になって家賃が入らなくなったらどうしよう」「長期間にわたって収益を確保できるだろうか」「家賃収入が途絶えたらローンの支払いが難しくなる」といった不安は、ストレスの原因となります。

収益物件を売却して手放すことで、損失リスクから解放され、運用に関する不安も解消されます。

すでに収益が十分であるか、損失をさらに出したくない場合、もしくは損失リスクのプレッシャーから解放されたい場合には、収益物件の売却を検討してみるとよいでしょう。

入居者を探す手間がかからない

収益物件を売却するメリットの一つが、入居者を募集する手間を省けることです。

マンションやアパートを所有している場合、入居者が退去した際にはすぐに新しい入居者を探さなければなりません。

新しい入居者が見つかるまでの間、空室期間が長引くと家賃収入が途絶えるリスクがあります。家賃収入が途絶えた場合、ローン返済や管理費、税金などの支払いを他の収入源や貯金で補填しなければなりません。

入居者を募集する際には、管理会社と条件を調整する必要があります。競合物件が多い地域や物件の状態が悪い場合は、家賃の見直しやリフォームを検討することも必要です。

例えば、家賃を3,000円下げる、インターネット無料物件にする、水まわり設備を新しくするなどの対策を取ることで、入居者を獲得しやすくなる可能性があります。しかし、これらの取り組みを行っても入居者が長期間見つからないこともあります。

収益物件を売却すれば、入居者募集にかかる手間や時間を省くことが可能です。

また、物件の大規模修繕や室内のリフォームにかかる費用も節約できます。

管理の手間を省くことができる

収益物件を売却するメリットの一つは、管理の手間を省けることです。収益物件を所有すると、次のような管理業務を行う必要があります。

●入居者の募集業務

・不動産会社との打ち合わせ

・物件の宣伝

・内見の案内

・賃貸借契約の対応など

●入居者の管理業務

・クレーム対応

・家賃回収

・家賃滞納者の対応

・契約更新手続きの対応など

●建物の管理業務

・定期点検・メンテナンス

・室内や設備の修繕

・原状回復工事

・リフォーム工事

・物件の清掃など

これらの対応を管理会社に委託することも可能ですが、その場合は管理委託手数料が発生します。手数料の相場は家賃収入の約5%です。

例えば、月の家賃収入が10万円の場合、月5,000円程度、年間6万円程度の管理委託手数料を支払うことになります。

ただし、管理会社に委託しても、完全に手間がなくなるわけではありません。管理会社からの報告を受けて対応を判断することがあり、適切な判断を下すための情報収集も必要になります。情報収集などに時間を費やすことで、本業やプライベートに支障が出る可能性もあります。

収益物件を手放せば、これらの管理業務に時間を費やす必要がありません。

投資用ローンを完済できる

投資用ローンを完済できることも、収益物件を売却するメリットの一つです。

不動産投資を始める際、多くの人は投資用ローンを利用します。収益物件は高額であり、自己資金だけでは購入が難しいためです。また、ローンを利用すれば、自己資金の何倍もの金額で取引できるレバレッジ効果が期待できます。

株式会社MFSの調査によれば、オンライン不動産投資ローンサービス「モゲチェック不動産投資」の申込者の年収倍率(ローン額と年収の比率)は、最も多いのが5倍以下の37%で、次に多いのが6倍〜10倍の28%でした。

ローンを利用すれば、不動産投資が身近になり、自己資金が少ない人でも収益物件を購入できます。

しかし、ローンの返済は簡単ではなく、数十年にわたって返済プレッシャーを感じながら生活することになります。

収益物件を売却すれば、売却代金でローンを完済し、借入金をゼロにすることが可能です。借入金がなくなることで、ローン返済のストレスから解放されます。

「投資用ローンを完済したい」「負債を解消したい」という場合には、収益物件の売却を検討してみるとよいでしょう。

なお、投資用ローンを利用している場合、物件には金融機関の抵当権が設定されているため、売却時にはローンを完済し、抵当権を抹消する手続きが必要です。

収益不動産売却査定サイト

収益物件を売却するデメリットとは?

収益物件を売却する際のデメリットには、定期的な収益が得られなくなることや、現金化までに時間がかかること、取引に伴うコストがかかることなどが挙げられます。

これらのデメリットを把握することで、売却に伴うリスク管理がしやすくなります。また、売却を検討するかどうかを冷静に判断することが可能です。

ここでは、収益物件を売却するデメリットについて見ていきましょう。

定期的な収益が得られなくなる

収益物件を売却するデメリットの一つは、定期的な収益を得られなくなることです。

ワンルームマンションやファミリーマンションを所有していると、家賃収入を得られますが、売却するとその収入はなくなります。

不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の「収益物件市場動向マンスリーレポート2024年5月期」によると、区分マンションなどの平均価格と平均利回りは、以下のとおりです。

物件平均価格平均利回り(表面利回り)
区分マンション2,030万円6.93%
一棟アパート7,861万円8.07%
一棟マンション1億7,909万円7.75%
出典:不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の「収益市場動向マンスリーレポート2024年5月期」

上記の平均価格と利回りをもとに年間収益を算出すると、区分マンションは約140万円、一棟アパートは約634万円、一棟マンションは約1,387万円となります。

収益物件を所有し続ければ、これらの収益が期待できますが、売却すると家賃収入はなくなります。そのため、家賃収入を生活費、マイホームのローン返済、車のローン返済、老後資金、海外旅行費用などに充てていた場合、その収益源が失われることになるため注意が必要です。

特に生活費に充てていた場合は、他の収入源で補う必要があります。

収益物件を売却する際には、その後の生活に大きな支障が出ないかシミュレーションを行った上で、判断することが大切です。

売却から現金化までに時間がかかる

売却から現金化までに時間がかかることもデメリットの一つです。

一般的に、不動産の売却には3ヶ月〜6ヶ月程度かかると言われています。ただし、物件の状態や市況によっては、それ以上の時間がかかることもあり、1年以上経っても買い手が見つからないこともあります。

収益物件を売却する流れは、以下のとおりです。

1.売却計画の作成

2.物件資料の準備

3.不動産会社の選定

4.媒介契約の締結

5.販売活動開始

6.売買契約の締結

7.決済、引き渡し

株式投資やFX、仮想通貨のように、不動産はすぐに売買できるわけではありません。不動産は流動性が低いため、現金化までに時間がかかります。

そのため、急な資金需要が理由で売却する場合、必要なタイミングに資金が間に合わない可能性があります。

買取を利用すれば、早期の現金化は可能ですが、仲介での売却と比べて価格が2割〜3割低くなる点には注意が必要です。

収益物件の売却を検討する場合は、現金化までに時間がかかることを踏まえ、余裕を持ったスケジュールで動くことが大切です。

オーナーチェンジ物件はトラブルになる可能性も

売却する収益物件がオーナーチェンジ物件の場合、トラブルの可能性があるため注意が必要です。

オーナーチェンジ物件とは、入居者がいる状態で売買される物件のことです。売主から買主へ所有者(オーナー)が変わることから「オーナーチェンジ物件」と呼ばれます。

オーナーチェンジ物件が買う側にとって人気のある理由

オーナーチェンジ物件の売買には、以下のようなメリットがあります】

●すぐに家賃収入が入る

オーナーチェンジ物件の場合、すでに入居者がいるため、買主はすぐに家賃収入を得ることができます。入居者がいることは、買主にとって大きな安心材料です。一定の家賃収入が見込め、入居者募集の不安も軽減されます。また、購入後にすぐ収益が見込めることから、資金計画も立てやすくなります。

●入居者募集の手間が省ける

オーナーチェンジ物件の大きなメリットは、入居者募集にかかる手間やコストを省けることです。通常、入居者のいない物件を購入する場合、最初に入居者を募集しなければなりません。管理会社や不動産会社と打ち合わせをし、条件を設定して入居者を募集します。

入居者募集には仲介手数料などのコストがかかるだけでなく、数ヶ月間も入居者が見つからない場合があります。その期間、家賃収入が入らないため、貯金などからローンの返済を行わなければなりません。オーナーチェンジ物件であれば、最初の入居者募集の手間とコストを省くことができます。

●賃貸経営の実績がある

オーナーチェンジ物件のメリットは、賃貸経営の実績を確認した上で購入の判断ができることです。通常、新築の収益物件を購入する際には、類似物件や過去の取引を参考にして家賃や募集期間などの予測値を用い、判断する必要があります。

しかし、あくまでも予測値であるため、実際には「想定よりも家賃が低かった」「入居者募集に予想以上に時間がかかった」ということが起こることがあります。

オーナーチェンジ物件はすでに入居者がいるため、実際の家賃収入や入居者募集の期間、入居者の属性、維持管理費などの実績データをもとにした判断が可能です。そのため、より正確な購入計画や運用戦略を立てることができます。

●ローン審査に通りやすい可能性がある

オーナーチェンジ物件は、これまでの運用実績があるため、将来の収益計画を具体的に立てることができます。そのため、金融機関からは評価されやすく、不動産投資ローンの審査に通りやすい場合があります。

一方で、オーナーチェンジ物件の売買には以下のようなデメリットもあります

●室内の状況を確認できない

オーナーチェンジ物件は、すでに入居者がいるため、買主が室内の状況を確認することが難しい場合があります。室内の状態は、入居前の写真などを参考にするしかありません。室内の状況を確認してから購入を検討したい方にとっては、大きなデメリットと言えます。

●入居者に問題がある可能性がある

売主は、入居者に問題があるため、物件を売却することも考えられます。買主が購入した後に大きなクレームが発生したり、家賃滞納などの問題が起きる可能性もありますので、入居者がいるからといって安心してはいけません。また、購入後すぐに入居者が退去する可能性もあります。

●すぐに修繕が必要な場合がある

購入直後に修繕が必要になるケースもありますので、注意が必要です。入居者が急に退去し、室内の状況を確認したら予想以上に悪いこともあります。また、大規模修繕があり、まとまった費用が必要となる可能性も考えられます。

●契約内容を変更するとトラブルが発生することがある

新オーナーは、旧オーナーと入居者が締結した契約を引き継ぎますが、その契約内容を一方的に変更することはできません。例えば、旧オーナーが割安な家賃で契約していた場合でも、契約期間中に家賃を値上げすることは難しいです。一方的に契約内容を変更してしまうと、大きなトラブルに発展する可能性があります。そのため、オーナーチェンジ物件を購入する際は、入居者との契約条件をしっかりと確認することが大切です。

このように、オーナーチェンジ物件には多くの魅力がありますが、トラブルが発生するリスクも伴います。そのため、オーナーチェンジ物件を売却する際には、トラブルリスクを軽減するために、事前に入居者対応を行い、買主に対して詳細な説明をすることが大切です。

売却タイミングによっては損することも

収益物件を売却する場合、必ずしも利益が得られるわけではありません。売却するタイミングによっては、損失が出る可能性もあるため注意が必要です。

損失リスクを減らし、利益を最大化するためには、市場の動向や物件の状態などを考慮して、売却タイミングを見極めることが大切です。

そのため、売却のスケジュールに余裕がない場合は、価格が低い時期に売却せざるを得なくなり、損失が生じるリスクが高まります。

良いタイミングで売却するには、信頼できる不動産会社に相談することも大切です。適切な売却タイミングや良い条件での売却方法など、さまざまなアドバイスやプランを提案してくれます。また、希望価格での購入希望者を探してくれるでしょう。

収益物件の売却を検討する場合は、事前にいくらで売却できれば利益が見込めるのかを確認し、信頼できる不動産会社と連携しながら適切な売却タイミングを見極めることが大切です。

取引コストがかかる

収益物件を売却する際のデメリットの一つは、売却に伴うコストが発生することです。

具体的には、不動産会社に支払う仲介手数料や、所有権の移転登記や抵当権の抹消手続きにかかる費用、投資用ローンを一括返済する際の手数料などがあります。

また、売却によって利益(譲渡所得)が生じた場合には、譲渡所得税などの税金も支払う必要があります。

例えば、仲介手数料は法律で上限が定められていますが、高額であることが多いです。

仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円+消費税(速算式)」で算出できます。仮に売却価格が4,000万円の場合、仲介手数料は138.6万円となります。売却価格が5,000万円なら171.6万円、1億円なら336.6万円です。

売却時にはコストがかかるため、売却価格が手取り金額に直結するわけではありません。

手数料や税金で数十万円〜数百万円の支出が発生することも考慮して、売却を検討する際には資金計画を立てることや、売却判断を行うことが必要です。

短期間で売却すると多額の税金がかかる

収益物件を購入して売却するまでの期間が短い場合は、多額の税金がかかる可能性があるため注意が必要です。

なぜなら、収益物件を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課税されますが、物件の所有期間によって税率が異なります。

所有期間が5年を超えている場合の税率は20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)ですが、所有期間が5年未満の場合は39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)の税率が適用されます。

例えば、売却による利益が6,000万円の場合、税率が20.315%なら1,218万9,000円、税率が39.63%なら2,377万8,000円の税金がかかります。※ここでは控除などを考慮していません。

所有期間が5年未満か5年を超えるかによって、税負担が約2倍変わる可能性があるため、売却する際には所有期間を事前に確認することが大切です。所有期間が5年に近づいている場合は、それまで待って売却することで手取り収入が増える可能性があります。

所有期間によって税率が変わることを理解し、売却のタイミングを慎重に見極めることが重要です。

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収益物件に適した売り時

収益物件を売却するのに適したタイミングには、大規模修繕工事の前、物件価値が上昇しているとき、満室であるときなどがあります。

これらのタイミングで売却することで、より多くの利益を得たり、支出を削減できる可能性が高まります。

ここでは、収益物件を売却するタイミングについて見ていきましょう。

大規模修繕工事の前

収益物件の売却タイミングの一つとして、大規模修繕工事の前が挙げられます。大規模修繕工事は、マンションの屋上や外壁、設備などの共用部分の劣化を補修・交換する工事のことです。

大規模修繕工事の主なメリットとデメリットは、以下のとおりです。

【メリット】

・建物の美観を維持できる

・建物の耐久性が向上する

・快適性や安全性が向上する

・物件の資産価値が高まる

【デメリット】

・修繕費用がかかる

・工事中にはさまざまな規制がある

大規模修繕工事による補修や塗装により、建物の外観が美しくなり、耐久性も向上します。また、生活がしやすくなり、安全性も高まります。劣化や故障箇所の修繕により、物件の資産価値も向上することが、大規模修繕工事のメリットです。

しかし、大規模修繕工事には膨大な費用がかかります。大規模修繕計画にもとづいて修繕積立金を用意しますが、これだけでは賄えないことも少なくありません。不足する資金は新たに捻出する必要があります。

国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、1戸あたりの工事金額は100万円〜125万円が最も多く、平均151.6万円です(1回目の工事の場合)。

また、大規模修繕工事が開始されると、一定期間バルコニーの利用が制限されたり、屋上に立ち入れないなどの規制が生じます。

大規模修繕で行われる主な修繕箇所と内容は、以下のとおりです。

修繕箇所修繕内容
外壁タイルが浮いたりひび割れしていないかを確認し、必要に応じて補修します。また、外壁の塗装も行います。
屋上屋上でひび割れなどが発生すると、雨漏りの原因となります。そのため、大規模修繕でひび割れなどを補修し、防水工事を行います。
バルコニーバルコニーもひび割れや経年劣化が起きている場合、補修工事や防水工事を行います。
シーリングシーリング材は、一般的にサッシ周辺や外壁のつなぎ目に使用されており、経年劣化が雨漏りの要因になることがあります。そのため、補修工事を行います。
鉄部共用部分の階段やバルコニー、屋上などの手すり、扉の鉄部はサビが発生していることが多いため、補修や塗装が行われます。

一般的に、大規模修繕工事は12年〜15年周期で行われるとされています。国土交通省の調査によると、最も多い周期は13年(23.1%)で、次いで12年(18.8%)、14年(15.4%)、15年(11.1%)となっています。

大規模修繕工事を実施することで資産価値の向上が期待できますが、多額の費用がかかる可能性もあります。そのため、大規模修繕工事の前に売却を検討する方が多いです。

修繕コスト

物件価値が上昇しているとき

収益物件を売却するタイミングの一つは、物件価値が上昇しているときです。価値が上昇している時期に売却すれば、そうでない時期よりも高く売ることができます。

物件の価値は需給バランスや景気によって変動します。例えば、国内外から多くの資金が流入して需要が高まると物件の価値は上昇しますが、供給過多になると価値は下がりやすくなります。

そのため、収益物件の売却を検討する際には、物件の価値が高い時期かどうかを確認することが大切です。

公示地価を確認する、定期的に査定を行う、不動産会社に相談するなど、さまざまな方法で物件の価値を把握できるため、定期的にチェックすることを心掛けましょう。

物件の価値が下落している時期に売却すると、利益どころか損失が発生する可能性もあるため、注意が必要です。

収益物件が満室のとき

収益物件が満室のときは、適切な売却タイミングの一つと言えます。なぜなら、満室の状態は非常に魅力的なポイントとなるからです。

買主からすれば、満室の物件を購入することで、すぐに最大限の家賃収入を得ることができます。

また、「この物件は満室だから高い賃貸需要がある」「将来空室が出ても、すぐに入居者を確保できるだろう」と高い評価を得られる可能性があります。買主にとって、空室リスクが低いことは大きな魅力です。

そのため、満室時に売却すれば、高値で売れる可能性があります。

一方で、空室が目立つ場合は、売却価格が下がる可能性があるため注意が必要です。

購入者にとっては、家賃収入が少なく赤字になるリスクがあります。入居者募集の手間や費用もかかり、すぐに入居者を確保できる保証もありません。

「空室が埋まらないから売却しているのかもしれない」という懸念から、売却価格が下がる可能性があります。

ただし、満室状態で家賃収入が最大限入ってくるときに、売却を決断するのは簡単ではありません。そのまま賃貸として続けるか、売却するか、両方のシミュレーションを行い、どちらがよりお得かを慎重に判断することが重要です。

満室状態での売却は、収益物件を売却する1つのタイミングであることを理解しておきましょう。

銀行の融資が付きやすいとき

銀行の融資が付きやすいときは、収益物件を売却する一つのタイミングです。一般的に、次のような物件は、銀行の融資が付きやすいとされています。

●物件の担保価値が高い

金融機関は融資の際に物件に抵当権を設定します。抵当権を設定するのは、万一、ローン返済が滞った場合に物件を売却して資金を回収するためです。物件の担保価値は、建物の状態や築年数、立地、賃貸需要、収益性などをもとに評価されます。担保価値が高い物件は融資が付きやすいですが、逆に担保価値が低い物件は融資が難しい可能性があります。

●残存耐用年数が長い

耐用年数の残り期間が長い物件は、銀行の融資が付きやすいとされています。なぜなら、耐用年数を過ぎると、会計上、物件の価値がなくなるためです。建物の法定耐用年数は、木造が22年、鉄筋コンクリート造や鉄筋鉄骨コンクリート造が47年、鉄骨造は鉄骨の厚みによって19年から34年となります。通常、金融機関は耐用年数の範囲内でしか融資を行いませんので、残存期間が長いほど融資が付きやすく、残存期間が短いほど融資が難しくなる可能性があります。

買主の立場から見ると、銀行の融資が付きやすい物件は魅力的です。そのため、物件の担保価値が高い場合や耐用年数の残り期間が長い場合は、良い売却タイミングの一つと言えます。

銀行へのアパートローン返済が滞るイメージ

所有期間が長く税金が安くなったとき

収益物件を売却するタイミングの一つが、所有期間が長くなり、税金が安くなったときです。

物件を売却して得た利益には譲渡所得税が課されますが、物件を一定期間以上所有している場合は税率が低くなります。

以下は、物件の所有期間と適用される税率です。

・所有期間が5年を超える場合:税率20.315%(内訳:所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)

・所有期間が5年未満の場合:税率39.63%(内訳:所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)

所有期間が5年を超えるかどうかで、税率にほぼ2倍の差が生じます。そのため、同じ売却価格であれば、所有期間が5年を超えている方が手取り収入を増やすことができます。所有期間が短いうちに売却すると、利益に対して約4割の税金がかかることになるので注意が必要です。

所有期間が長い場合は、売却を検討する際の重要な判断材料となります。

減価償却期間が終了するとき

減価償却とは、不動産の購入費用を毎年に分けて経費として計上する制度です。

減価償却の期間は、建物の種類に応じて定められた法定耐用年数が適用されます。例えば、木造建築は22年、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造は47年です。

減価償却を行うことで、物件の購入費用を長期間にわたって経費として計上し、課税所得額を抑えることが可能なため節税効果が期待できます。

ただし、減価償却期間が終了すると、経費が減少して、課税所得額が増加することになるため注意が必要です。また、法定耐用年数を過ぎると、買主にとって物件の魅力が減少し、売却条件が悪化する可能性もあります。

したがって、減価償却期間が終了した後ではなく、その前に売却を検討する方は多いです。

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収益物件が売れないとき、その理由は?

収益物件が売れないときのよくある理由を理解しておくことは大切です。売れない理由を把握することで、対策を講じやすくなり、リスク管理が可能です。

ここでは、収益物件が売れない場合のよくある理由について見ていきましょう。

立地に問題がある

収益物件が売れない理由の一つとして、立地条件が考えられます。収益物件を選ぶ際には、収益性が重要視され、収益性には立地が大きく影響します。

そのため、立地が良い物件は買い手が見つかりやすく、立地が悪い物件は敬遠されがちです。

例えば、次のような物件は人気が高く、早期に売却できる可能性があります。

・主要な駅から近い

・近くにスーパーやコンビニ、病院などがある

・人気のある地域に位置している

また、以下のような物件は売却までに時間がかかることがあります。

・駅やバス停までの距離が遠い

・近くにスーパーやコンビニ、病院などの施設がない

・賃貸需要が低い立地にある

収益物件が売れない場合は、物件の立地条件を客観的に評価する必要があります。立地条件が悪い場合には、リフォームを行う、価格を下げる、販売活動を見直すなど、何らかの対策が必要になります。

価格設定に問題がある

収益物件が売れない理由の一つに、価格設定の問題があるかもしれません。売り出し価格が適正でないと、売却の可能性は低くなります。

買主はさまざまな不動産を調査し、不動産会社からのアドバイスも受けるため、相場より高い物件は敬遠される可能性が高いです。

売主としてはできるだけ高く売却したいと思うものですが、強気な価格設定は機会損失を招くことがあるため、注意が必要です。

収益物件が思うように売れない場合は、価格が適正かどうかを不動産会社と相談することをおすすめします。

築年数に問題がある

築年数が原因で、収益物件が売却できないことがあります。

一般的に、築年数が古くなるほど物件の評価は低くなり、買主を見つけるのが難しくなります。また、1981年以前に建てられた物件は旧耐震基準である可能性が高く、買主から敬遠される傾向があります。

・旧耐震基準:1981年の建築基準法改正前の耐震基準。震度5強程度の地震で建物が倒壊・崩壊しないことを基準としている。

・新耐震基準:1981年の建築基準法改正後の耐震基準。震度6強や7程度の地震で建物が倒壊・崩壊しないことを基準としている。 特に旧耐震基準の物件の場合、価格を下げる、リフォームを行う、耐震工事で補強するなど、何らかの対策を講じることで売却の可能性を高めることができます。築年数が古い物件は、不動産会社と相談し、売却方針を再検討した方がよいかもしれません。

維持管理費に問題がある

収益物件が売れない理由の一つに、維持管理費の問題があるかもしれません。

維持管理費は収益性に関係するため、負担が大きい物件は敬遠されがちです。ランニングコストが高いと収益性が悪化し、利益率が低くなります。

特に、築年数が古い物件や豪華な設備が付いている物件は、維持管理費が高くなる傾向があるため注意が必要です。

例えば、築年数が古い物件では修繕や設備交換、リフォームなどが必要になることが多く、購入後すぐに大規模修繕が発生することもあります。買主にとって大きな支出となり、利回りが低下する原因となります。

売却前に類似物件との維持管理費の差を確認し、コスト負担が大きい場合は売り出し方針を見直すなどの工夫が必要です。

買主の資金調達に問題がある

収益物件が売却できない理由として、買主の資金調達に問題がある可能性が考えられます。多くの人は収益物件を購入する際に不動産投資ローンを利用します。物件金額が高額で、自己資金だけで購入することは難しいためです。

しかし、不動産投資ローンは審査があるため、必ずしも融資が受けられるわけではありません。

そのため、購入希望者が現れても資金調達がうまくいかず、購入に至らないケースがあります。不動産投資ローンの審査が通らない主な理由は、次のとおりです。

・物件の担保価値が低い

・買主の返済能力や信用情報に問題がある

金融機関は物件に抵当権を設定するため、担保価値が適切かどうかを審査します。そのため、物件の担保価値が金融機関の基準を満たしていない場合、審査が通らないことがあります。また、買主の返済能力や信用情報に問題がある場合は、貸し倒れリスクが高いと判断され、融資が下りない可能性が高いです。

売却物件が魅力的であっても、買主側の都合で売れない場合があることを理解しておきましょう。

収益物件を高く売るためのポイント

収益物件を高く売るためのポイントには、売却タイミングを見極めること、利回りを基準に売出し価格を設定すること、複数の不動産会社に査定を依頼することなどがあります。

これらのポイントを理解することで、収益物件を高値で売却できる可能性が高まります。

ここでは、収益物件を高く売るためのポイントについて見ていきましょう。

タイミングを見極める

収益物件を高く売るために大切なのは、売却のタイミングを見極めることです。不動産市場は常に変動するため、同じ物件でも売却時期によって利益が大きく異なります。 不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の「不動産投資年間レポート<2023年1月〜12月期>」によると、過去数年間の収益物件の価格動向は以下のとおりです。

区分マンション一棟アパート一棟マンション
2017年1,499万円6,524万円1億5,895万円
2018年1,424万円6,698万円1億5,897万円
2019年1,566万円6,501万円1億5,161万円
2020年1,494万円6,550万円1億5,732万円
2021年1,533万円6,977万円1億6,312万円
2022年1,511万円7,478万円1億6,652万円
2023年1,738万円7,886万円1億7,111万円
出典:不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の「不動産年間レポート<2023年1月〜12月期>」

また、国土交通省が公表している「不動産価格指数」(2010年の平均価格を基準値(100)とした指数)も、常に変動しています。例えば、令和5年の第1四半期におけるマンション・アパート一棟の指数は157.6で、前期比で0.2%上昇しています。

売買のタイミングを見極めるには、こうした情報を定期的に確認することが必要です。また、不動産会社との信頼関係を築き、適切な売却タイミングをアドバイスしてもらえるようにしておくことも大切です。

売却を急いでいない場合は、じっくりと時間をかけて情報収集を行い、最適なタイミングを探りましょう。

利回りを基準にして売り出し価格を設定する

収益物件を高く売るためのポイントの一つは、利回りを基準にして売却価格を設定することです。多くの投資家は収益物件を購入する際に利回りを重視するため、利回りをもとに価格を設定することが重要です。

また、物件の収益性をもとに価格設定を行わないと、その売却価格が適正かどうかわかりにくいこともあります。

ただし、個人で正確な売却価格を算出するのは簡単ではありません。間違った価格をもとにシミュレーションや売却判断を行うと大変です。

利回りを基準にした売却価格は、不動産会社に算出してもらうのがよいでしょう。不動産会社は適正な価格を算出するだけでなく、売却プランの提案やアドバイスも提供してくれます。

ただし、利回りを基準にして売却価格を算出する際には、収益性の低い物件は思うような高値で売却できない可能性もあります。

できるだけ家賃収入を増やす

できるだけ家賃収入を増やしておくことも、収益物件を高く売るためのポイントです。なぜなら、収益物件の評価は収益性に大きく依存し、収益が高ければ売却価格も高くなる傾向があるからです。

一般的に収益物件の査定に用いられる収益還元法では、物件の純利益(家賃収入から経費を差し引いた額)をもとに価格を算出します。

そのため、売却物件の家賃収入や純利益を最大限に増やしておくことで、より高い評価を受け、有利な条件で売却することが可能です。

駅近などで立地条件が良くても、物件の収益性が低い場合は売却価格は低くなりがちで、売却までに時間がかかる可能性もあります。

収益物件の売却を考えている場合は、物件の利回りや純利益を把握し、周辺の類似物件と比較・評価してみることが大切です。

しっかりと資料を用意する

収益物件を高く売るためのポイントの一つは、しっかりと資料を用意することです。

不動産会社や買主に物件の魅力をアピールするための資料を準備することで、物件の評価が向上し、より良い条件で売却できるかもしれません。

家賃収入や利回り、経費、入居者層、修繕計画などの詳細情報はもちろん、地域の将来性や周辺環境、競合物件との比較など、幅広い情報をまとめておくことが重要です。

インターネットだけでは得られない情報を加えると効果的です。

資料の準備には手間と時間がかかりますが、これにより売却価格が数十万円〜数百万円上昇することもあり得ます。

不動産会社や買主の視点から、物件を評価する際にどのような情報が重要かを考えて資料を準備しましょう。

複数の不動産会社に査定を依頼する

収益物件を高値で売却するためには、複数の不動産会社に査定を依頼することが大切です。その理由は、次のとおりです。

・査定額の高い不動産会社がわかる

・売却価格の相場を把握できる

・自分に合った不動産会社を見つけられる

・悪質な不動産会社を回避できる

複数の不動産会社に査定を依頼することで、査定額を比較でき、最も高い査定額を提示する不動産会社がわかります。「A社3,000万円、B社3,300万円、C社2,900万円、D社3,050万円」など、各社の査定額をもとにおおよその相場を把握することが可能です。

さらに、査定を通じて不動産会社とコミュニケーションを取ることで、各社の特徴や対応を理解でき、自分に合った不動産会社を見つけるのにも役立ちます。

査定額が高く、実績が豊富で信頼できる不動産会社を見つけることができれば、好条件での売却が期待できます。

悪質な不動産会社は、極端に高いまたは低い査定額を提示することがありますが、相場を把握していれば回避可能です。多くの不動産会社と接することで、怪しい不動産会社を見分けやすくなります。

複数の不動産会社に査定を依頼する場合は、一括査定サイトを利用すると便利です。一括査定サイトは、1度の情報入力で複数の不動産会社に査定を依頼できるため、1社ずつ物件情報や個人情報を入力する手間を省けます。そのため、効率的に査定依頼を行うことができます。収益物件を高く売却したい場合は、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。

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収益物件を売却するときのリフォーム

収益物件の築年数が経っている場合や売却時の価値を向上させたい場合、多くの売主がリフォームを検討します。

リフォームを行うことで、より有利な条件での売却が可能になります。

ここでは、リフォームをする際のポイントや費用を抑える方法について見ていきましょう。

リフォームで収益物件の価値を高めることは重要

収益物件をリフォームすることで、価値が高まり、早期に売却できる可能性があります。

買主は、購入を検討する際、賃貸需要や家賃収入、維持管理費などを考慮して判断します。

築年数が古い物件は、購入後に修繕やリフォームが必要であり、その費用や維持管理費が高額になることから、敬遠されがちです。

売主がリフォームを行っていれば、買主は購入後の修繕やリフォーム費用の負担を軽減でき、購入に踏み切りやすくなります。

また、リフォームによって室内が新築のように生まれ変わることで、多くの人が物件に興味を持つことが期待できます。賃貸需要が向上し、収益性も高まるでしょう。そのため、リフォーム費用を充分に回収できる価格で売却できる可能性があります。

「早く買主を見つけて売却したい」「収益物件を高値で売却したい」という場合には、リフォームを検討するのも一つの方法です。

収益物件をリフォームする際のポイント

収益物件のリフォームで特に重要なポイントは、内装の改善と設備の交換です。

壁紙、フローリング、タイル、建具などの内装を新しくすることで物件の印象が大幅に向上します。また、キッチン、エアコン、トイレ、お風呂、洗面化粧台などの設備を新しいものと交換することも効果的です。特に水回りの設備の状態は、多くの入居者にとって重要です。

買主からは「築年数は古いけれど、ここまで新しい設備や内装なら入居者が集まりやすいだろう」「しばらくは修繕やリフォームをする必要がなさそうだ」といった良い評価を得ることができるでしょう。

また、収益物件が一棟マンションやアパートの場合は、宅配ボックスの設置、オートロックの導入、高速インターネット回線の整備など、共用部のリフォームも重要です。これらのリフォームは入居者の満足度向上につながり、賃貸需要が高まる可能性があるため、買主からも好まれやすいです。

このようなリフォームを行うことで、収益物件の価値が向上し、良い条件で売却できる可能性が高まります。

収益物件のリフォーム費用を抑える方法

収益物件のリフォーム費用を抑えるために大切なポイントは、以下のとおりです。

・必要なリフォーム工事を見極める

・複数のリフォーム業者から見積もりを取る

・DIYで工事を行う

壁紙、フローリング、建具、キッチン、お風呂、洗面化粧台など、さまざまな部分のリフォームを考えるかもしれませんが、すべてを一度に行うと高額な費用がかかります。

費用を抑えるためには、優先順位の高いリフォームに絞ることが重要です。費用対効果を考慮し、本当に必要なリフォームとそうでないリフォームを見極めましょう。

また、同じ工事内容でもリフォーム業者によって費用が異なるため、見積もりを取って比較することが大切です。複数の業者を比較することで、高額な業者を回避でき、適正価格や割安な業者を選ぶことができます。

一括見積もりサイトを利用すれば、複数の業者に一度に見積もり依頼ができるので、効率的です。

部分的にDIYを取り入れることで、リフォーム費用を削減することもできます。大規模な工事は難しいですが、比較的簡単な作業であれば自分で対応できるかもしれません。 このように、必要なリフォーム工事を見極め、複数の業者を比較し、DIYを取り入れることで、リフォーム費用を削減することが可能です。

リノベーションの実例

収益物件の価格を決める3つの算出方法

収益物件の査定価格を算出する方法には、「収益還元法」「原価法」「取引事例比較法」の3つがあります。

それぞれで計算方法が異なり、査定対象となる不動産の種類に応じて選択されます。

ここでは、「収益還元法」「原価法」「取引事例比較法」それぞれの内容について見ていきましょう。

収益還元法

収益還元法とは、その物件が将来どれだけ稼げるのか(収益性)に着目した査定方法です。ワンルームマンション、一棟マンション、一棟アパートなど、主に収益物件の査定に用いられます。

収益還元法には、「直接還元法」と「DCF法」の2種類があります。それぞれの詳細は、以下のとおりです。

●直接還元法

直接還元法は、収益物件が一定期間に得る純利益(家賃収入−経費)を還元利回りで割って収益価格を算出する方法です。

・年間純利益÷還元利回り=収益価格

例えば、6室あるアパートで1室の家賃収入が月8万円、1室あたりの月経費が3万円の場合、年間純利益は360万円です。還元利回りが4%の場合、収益価格は以下のようになります。

・年間純利益360万円÷還元利回り4%=収益価格9,000万円

また、1室の家賃収入が月10万円で、1室あたりの月経費が2万円の場合、収益価格は次のように計算されます。

・年間純利益576万円÷還元利回り4%=1億4,400万円

このように、直接還元法では、年間の純利益と還元利回りをもとに収益価格を算出します。計算が比較的シンプルなので、一般の方でも利用しやすい方法です。

●DCF法

DCF(DiscountedCashFlow)法は、物件の保有期間中に得られる純利益と売却時の予想価格を現在価値に割り戻して算出する方法です。

直接還元法が1年間の純利益をもとに計算するのに対し、DCF法では数年間の純利益を用います。また、空室や家賃の下落率などのリスクも考慮するため、計算は非常に複雑です。

しかし、DCF法を用いると、直接還元法よりも精度の高い金額を算出可能です。所有物件のDCF法による価格を知りたい場合は、不動産会社に直接問い合わせてみましょう。

原価法

原価法は、査定対象となる物件を取り壊し、もう1度建設する場合の費用を計算して、そこから老朽化分の価値を差し引き、査定額を算出する方法です。

原価法の計算式は、以下のとおりです。

・再調達単価×延床面積÷耐用年数×残存年数

再調達価格とは、該当物件を再び建築する場合にかかる費用のことです。国税庁の「建物の標準的な建築価額表」を参考にします。

令和元年における構造別の建築価額(1㎡あたり)は、以下のとおりです。

・木造・木骨モルタル造:17万100円

・鉄筋鉄骨コンクリート造:36万3,300円

・鉄筋コンクリート造:28万5,600円

・鉄骨造:22万8,800円

耐用年数は、建物の種類によって異なります。

・木造:22年

・木骨モルタル造:20年

・鉄筋鉄骨コンクリート造:47年

・鉄筋コンクリート造:47年

・鉄骨造:鉄骨の厚さが4mm超34年

鉄骨の厚みが3mm超4mm以下27年

鉄骨の厚みが3mm以下19年

※国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」より

残存年数は、耐用年数から築年数を引いた値です。例えば、耐用年数が47年で築年数が30年の場合、残存年数は17年です。

原価法は、一戸建て住宅の査定額を算出する際などに用いられます。

取引事例比較法

取引事例比較法は、査定する物件と類似した物件の成約事例をもとに価格を算出する方法です。

主に中古マンションや土地の査定に使用され、実際の取引価格を参考にするため、市場相場を反映した価格を設定可能です。

取引事例比較法では、類似物件の成約事例から1㎡あたりの価格を算出し、それを物件の面積に掛けて査定価格を算出します。その際には、築年数や駅からの距離、間取り、階数、室内の状況など、さまざまな要素を評価し、プラス・マイナスの補正を行います。

収益不動産売却査定サイト

収益物件の売却にかかる費用・税金

収益物件を売却する際には、譲渡所得税や登録免許税、印紙税、仲介手数料、ローンの一括返済手数料など、さまざまな費用や税金が発生します。

これらの負担を事前に把握することで、具体的な資金計画を立てることができます。また、売却によって手元に入る資金の具体的なシミュレーションも可能です。 ここでは、収益物件の売却にかかる費用や税金について見ていきましょう。

税金が滞るイメージ

譲渡所得税

収益物件を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合は、譲渡所得税がかかります。譲渡所得の計算方法は、以下のとおりです。

・譲渡価額−(取得費+譲渡費用)

譲渡価額は売却価格のことで、取得費は収益物件の購入金額から減価償却費を差し引いた金額です。譲渡費用は、売却する際にかかった費用(仲介手数料など)になります。

譲渡所得税は、売却する収益物件の所有期間に応じて、税率が変わります。詳細は、以下のとおりです。

所有期間税率
5年超(長期譲渡所得)20.315%
(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
5年以下(短期譲渡所得)39.63%
(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)
出典:国税庁「土地や建物を売ったとき

所有期間が5年を超えるかどうかで、税率が2倍近く変わります。譲渡所得税の計算方法は、以下のとおりです。

・課税譲渡所得金額×税率

また、課税譲渡所得金額は、「譲渡所得−特別控除額」で算出可能です。

例えば、10年所有した収益物件を売却し、課税譲渡所得金額が1,000万円だった場合の譲渡所得税は「1,000万円×20.315%=203万1,500円」です。同じ条件で所有期間が3年の場合、譲渡所得税は396万3,000円となります。※控除などは考慮していません。

また、不動産を譲渡した場合の特別控除額には、収用等により土地建物を売ったときの特例(特別控除額5,000万円)や、マイホームを売ったときの特例(特別控除額3,000万円)などがあります。 収益物件を売却して利益が出た場合は、譲渡所得税が課される可能性があることを理解しておきましょう。

住民税

住民税は、消防、救急、福祉、教育、ごみ処理などの地方行政サービスに充てられる地方税です。収益物件を売却して利益が出た場合には、住民税が課されますが、譲渡所得税の中に含まれています。

・長期譲渡所得:20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)

・短期譲渡所得:39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)

このように、収益物件の所有期間が5年を超える場合は5%、5年以下の場合は9%の住民税がかかります。

復興特別所得税

復興特別所得税は、東日本大震災の復興財源に充てるため、所得税に上乗せして徴収される税金です。復興特別所得税の徴収期間は2013年1月1日から2037年12月31日までで、税額は所得税の2.1%相当額となります。

収益物件を売却して利益が出た場合、譲渡所得税として20.315%または39.63%の税金がかかりますが、復興特別所得税はこの中に含まれています。

・長期譲渡所得:20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)

・短期譲渡所得:39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)

このように、収益物件の所有期間が5年を超える場合は0.315%、5年以下の場合は0.63%の復興特別所得税がかかります。

参考:国税庁「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし

登録免許税(抵当権抹消登記)

収益物件をローンで購入している場合、金融機関が抵当権を設定しています。物件を売却する際には、借入金を返済し、抵当権を抹消する手続きが必要です。その際にかかる税金が登録免許税です。

抵当権が抹消されると、登記簿謄本から抵当権に関する記録が削除されます(アンダーラインが引かれます)。

抵当権抹消登記の登録免許税は、1つの不動産につき1,000円です。例えば、抵当権を抹消する不動産が3つある場合、登録免許税は3,000円となります。

手続きに必要な書類は、以下のとおりです。

・抵当権抹消登記申請書

・登記済証または登記識別情報

・登記原因証明情報(抵当権解除証書など)

・委任状など

抵当権抹消登記の手続きは、自分で行うこともできますが、手間や時間がかかる上に手続きを誤る可能性があります。そのため、抵当権抹消登記は司法書士に依頼するのが一般的です。

司法書士に依頼すると、手続きにかかる手間や時間を省くことができ、間違いのない手続きを行うことができます。

ただし、司法書士に依頼する場合は、司法書士報酬(手数料)がかかります。日本司法書士会連合会の「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」によると、抵当権抹消登記の際の報酬の平均は、以下のとおりでした。

地域低額者10%の平均全体の平均高額者10%の平均
北海道地区8,358円15,532円30,120円
東北地区8,307円13,863円22,091円
関東地区9,536円15,613円26,001円
中部地区9,839円16,638円35,220円
近畿地区9,933円18,795円32,444円
中国地区9,471円15,289円26,682円
四国地区9,917円14,409円21,562円
九州地区9,737円13,821円22,676円
出典:日本司法書士会連合会の「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)

地域によって異なりますが、おおよそ1万5,000円程度かかります。司法書士事務所を探す際は、手数料がいくらかかるのかを事前に確認しておきましょう。不動産投資ローンを完済したら、すぐに抵当権抹消手続きを進めることをおすすめします。

印紙税

印紙税は、売買契約書や領収書などの文書を作成した際に課される税金です。売買契約書などに収入印紙を貼り付けて納付します。印紙税額は、契約書に記載された売買金額によって異なります。

詳細は、以下のとおりです。

契約書に記載された売買金額印紙税額
(1通または1冊につき)
本則
印紙税額
(1通または1冊につき)
軽減税率
1万円未満非課税非課税
10万円以下200円200円
10万円超50万円以下400円200円
50万円超100万円以下1,000円500円
100万円超500万円以下2,000円1,000円
500万円超1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超1億円以下6万円3万円
1億円超5億円以下10万円6万円
5億円超10億円以下20万円16万円
10億円超50億円以下40万円32万円
50億円超60万円48万円
契約金額の記載のないもの200円200円
出典:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで

軽減税率は、平成26年4月1日〜令和9年3月31日までの間に作成された契約書で、売買金額が10万円を超える場合に適用されます。

通常、売買契約書は2通作成されますが、一般的には買主と売主がそれぞれ印紙税を負担します。

収益物件を売却する際には、印紙税を含めた資金計画を立てるようにしましょう。

参考:国税庁「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

消費税

収益物件の売却する際に発生する仲介手数料などの費用には、消費税がかかります。特に仲介手数料は金額が大きいため、消費税も高額になる可能性があります。

例えば、収益物件を4,000万円で売却した場合、仲介手数料は「126万円+消費税」です。この場合の消費税は12万6,000円となります。

不動産売買においては、消費税もかなりの額になることがあるので、シミュレーションを行う際には忘れないようにしましょう。

仲介手数料

仲介手数料とは、収益物件の売買が成立した際に、不動産仲介会社に支払う手数料のことです。仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限が定められています。詳細は、以下のとおりです。

売買価格仲介手数料の上限
200万円までの部分5%+消費税
200万円超〜400万円までの部分4%+消費税
400万円超の部分3%+消費税
出典:宅地建物取引業法

例えば、収益物件を3,000万円で売却した場合の仲介手数料は、以下のとおりです。

・200万円までの部分:200万円×5%=10万円+消費税

・200万円超〜400万円までの部分:200万円×4%=8万円+消費税

・400万円超の部分:2,600万円×3%=78万円+消費税

・合計:105.6万円(税込)

また、速算式を用いて仲介手数料の上限を計算する方法もあります。

・速算式:売買価格×3%+6万円+消費税

以下は、収益物件の売買価格別の仲介手数料の一覧です。

売買価格仲介手数料の上限(税込)
1,000万円39万6,000円
2,000万円72万6,000円
3,000万円105万6,000円
4,000万円138万6,000円
5,000万円171万6,000円
6,000万円204万6,000円
7,000万円237万6,000円
8,000万円270万6,000円
9,000万円303万6,000円
1億円336万6,000円
1億5,000万円501万6,000円
2億円666万6,000円
※速算式

仲介手数料は法律で上限が規定されていますが、下限は設定されていません。そのため、不動産会社によって仲介手数料が異なる場合があります。また、「仲介手数料10%割引キャンペーン」「自社グループで購入した収益物件を売却する場合は20%割引」など、仲介手数料が割引されるキャンペーンや特典を提供している場合もあります。

仲介手数料は金額が大きいため、不動産仲介会社を選ぶ際には、手数料がいくらなのかを確認することが大切です。

ローンの一括返済手数料

不動産投資ローンを利用して収益物件を購入している場合は、金融機関が抵当権を設定しています。そのため、物件を売却する際には、ローンを完済して抵当権を抹消する手続きが必要です。

ローンを一括繰上返済する場合、ほとんどの金融機関で繰上返済手数料が発生します。

以下は、主な金融機関で不動産投資ローンを一括返済する際にかかる手数料です。

金融機関手数料
オリックス銀行【固定金利の場合】
繰上返済元本金額の2.0%
 
【変動金利の場合】
繰上返済元本金額に適用される料率は、変動金利期間によって異なります。
1年以内:2.0%
1年超3年以内:1.5%
3年超5年以内:1.0%
5年超:0.5%
※2009年4月1日以降にローンを契約した場合
スルガ銀行【融資実行日より5年以内の場合】
繰上返済元本金額の2.0%
 
【融資実行日より5年経過している場合】
1万1,000円(税込)
SBIエステートファイナンス繰上返済元本金額の最大3.0%
SMBC信託銀行【固定金利の場合】
繰上返済元本金額の1.1%
 
【変動金利(1年見直し型)の場合】
繰上返済元本金額の1.1%
セゾンファンデックス繰上返済元本金額の最大3.0%
関西みらい銀行無料
※最新の情報については、直接金融機関にお問い合わせください。

例えば、繰上返済元本金額が2,000万円で適用される料率が2.0%の場合、繰上返済手数料は40万円となります。

ほとんどの金融機関は、繰上返済元本金額に一定の料率を掛けて手数料を算出するため、元本が多いほど手数料も高くなる傾向があります。

不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」の「不動産投資に関する意識調査(第20回)」によれば、収益物件を購入する際に不動産投資ローンを利用した人は64.7%でした。

不動産投資ローンを利用して物件を購入し、売却時に残債がある場合は、繰上返済手数料も考慮した資金計画を立てる必要があります。事前にローンの残高と繰上返済手数料の金額を確認しておきましょう。

その他の費用

収益物件を売却する場合、譲渡所得税や仲介手数料、ローンの一括返済手数料などの他に、次のような費用がかかる場合があります。

費用内容
ハウスクリーニング費用プロによる水まわりやフローリング、畳、玄関などの清掃費用です。
費用相場は以下のとおりです。
 
【空室の場合】
・1R・1K:1.9万円〜3.0万円
・1DK・2K:2.3万円〜3.0万円
・1LDK・2DK:2.9万円〜4.0万円
・2LDK・3DK:4.0万円〜4.2万円
・3LDK・4DK:4.3万円〜7.5万円
・4LDK・5DK〜:4.3万円〜
 
【居住中の場合】
・1R・1K:1.6万円〜4.0万円
・1DK・2K:2.9万円〜4.0万円
・1LDK・2DK:4.1万円〜7.0万円
・2LDK・3DK:5.1万円〜7.0万円
・3LDK・4DK:6.1万円〜10.0万円
・4LDK・5DK〜:6.1万円〜
司法書士報酬司法書士に抵当権抹消手続きを依頼する場合にかかる費用です。相場は15万円程度です。
測量費土地家屋調査士により、現地調査や現況測量、境界測量、確定測量などが行われます。費用の相場は30万円〜50万円程度です。
引っ越し費用収益物件の一室に自分が居住している場合は、引っ越し費用がかかります。引っ越し費用は荷物の量や移動距離、時期によって異なるため事前に確認が必要です。

収益物件を売却する際には、ハウスクリーニング費用や司法書士報酬、測量費、引っ越し費用がかかる可能性も考え、事前に資金のシミュレーションを行いましょう。

収益不動産売却査定サイト

収益物件の売買での失敗事例と対策7つ

収益物件の売買で成功を収めるためには、よくある失敗事例を知っておくことが必要です。

失敗している人がどのような思考パターンに陥ってその道を選んでしまったのか、その実際の事例や失敗を防ぐための対策についていくつか具体的な内容を見ていきましょう。

キャッシュフローのでない物件を買ってしまい売却できない

最も多く見られる収益不動産投資のパターンが、キャッシュフローが出ない物件を買ってしまい売却ができない事態に陥ってしまうことです。

キャッシュフローがでない状態とは、毎月の不動産収支の流れで、手元に現金が残らず、赤字になってしまうことを指します。

手元に現金がないといざというときの出費が足りないという以外にも、「高く売れない」という収益不動産の売却で大きなマイナスがあるのです。

例を見ていくと、新築ワンルームマンションなどの売買が挙げられます。購入時に資金がないので、35年ローンを組むことが多いですが、毎月の「家賃ーローン返済(諸費用や税金含む)というシミュレーション上で、毎月のキャッシュフローはややマイナスになっていることがあります。

それでもローンの返済が終われば、家賃収入が入ってくるので将来の資産形成に役立つと、不動産業者がアピールしてマンションを買わせようとするのです。

毎月のキャッシュフローが出ないような物件は自分の生活費を圧迫し、長期間保有することが困難になってしまうケースもあります。投資は毎月の利益を出すことを前提に行うものであり、30年以上も毎月キャッシュフローがマイナスな物件を持っておくことに特にメリットはないのです。

少なくとも新築物件を購入する時には、「将来値上がりするから」「35年ローンを支払い終わった後に家賃収入がまるまる自分の収入になるから」という言葉に惑わされるのではなく、きちんと短期的にも長期的にもキャッシュフローが出る物件を選ぶようにしましょう。

キャッシュフローが出ていない物件は、売却する時にもその収益性の低さを見破られてしまい、相場通りの価格で売却できないことがあります。例を上げると2,000万円で購入した新築ワンルームマンションを保有しており、毎月1万円の手取り出費がある状況での売却を行ったとしましょう。

しかし売却する時に、購入者は必ず現在の運用状況を聞いてきます。その際には現在はキャッシュフローが出ていないことも伝えなくてはいけません。そうなると、赤字運営の物件は購入する人にとっては魅力のない物件と思われてしまいます。

2,000万円購入して赤字になってしまう物件を、誰が同じ2000万円で買うというのでしょうか。

そのような物件を購入する人は最低でも黒字が出る金額での購入を望んでくるでしょうから、購入希望価格は1,600万円前後となるでしょう。

つまり、購入時よりもかなり低い値段での売却となり、毎月の収支というインカムゲインだけではなく、キャピタルゲインでもマイナスになります。

このような失敗自体を防ぐための対策としては、シミュレーション上でもきちんとキャッシュフローが出てくるマンションを購入するようにしましょう。特に新築物件などは建築した業者の利益が価格に乗っているため、購入した途端に2割以上値下がりすると言われます。 不動産の購入や売却に際してはキャッシュフローが出るかどうかをきちんと見定めておくことが重要です。キャッシュフローが出ているのであれば、自分が購入した価格帯と同じような水準で売れる可能性は十分にあります。

不正な融資を受けて購入したので一括支払いを求められる

収益物件の購入や売却でよく見られる失敗事例には、購入資金の融資の問題があります。こちらは実際にニュースなどで報道されることも多いので、聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

具体的には金利の低い住宅ローンを借りて投資用物件を購入したことが金融機関にバレて、契約と異なる違約状態となり一括返済を求められることです。

住宅ローンはあくまで自分が居住用にする不動産を購入するためのローンであり、多くの人に家を供給するために国がリードして金利を安くしている背景があります。

そのため賃貸併用住宅など一部の例外を除き、自分が居住しない投資用の物件を住宅ローンで購入することはできません。

しかし、昨今よく見られる事件を見ると不動産会社の人間が「購入してすぐ引っ越したことにすればいい」など契約とは異なる運用で購入者を誑かし、住宅ローンの融資を受けることで不動産物件を購入させるのです。

しかし、金融機関に居住の実態がないことが判明することも多く、金融機関は当初の金銭消費貸借契約の通りに一括返済を求めてきます。

一括返済をするために物件を売却して残債を一括で返済できればまだ良いのですが、毎月のキャッシュフローの出ない物件や、相場より高い価格で買わされている物件も多くなっています。そうすると物件を売却しても、ローンの残債を一括返済できる金額にならないこともあります。

そのため、ローン返済のために他の自分の資産を処分したり、最悪の場合自己破産などに陥ってしまうこともあるのです。

対策としては住宅ローンで投資用の収益物件を買うようなことは絶対にしないこと、そしてそのような提案をしてくる営業マンとは付き合いを持たないことが重要です。

住宅ローンは金利が低いので、、一般の投資用ローンよりお得に見えますが、利用できる条件は限られています。

昨今では住宅ローンで投資物件を買ったという事例が増えてきたこともあり、金融機関のチェックも厳しくなっています。

不正なローンで投資用物件を購入したことが金融機関に明らかになるケースは増加しています。

投資用物件を買う時は一般の不動産投資用ローンを利用し、やや金利の高い投資用ローンでもしっかりキャッシュフローの出る物件を購入することが将来の売却に向けて重要な要素になってきます。

節税対策に購入したが思ったような節税効果が得られないので売れない

不動産会社の営業マンの中には「この物件を購入すると節税対策になるので購入した方が良いですよ」とアピールしてくる人もいます。

確かに不動産物件による不動産収入は、サラリーマンの給与所得と損益通算できます。

例えば不動産物件を購入した時に不動産取得税や登録免許税で高額な支払いが発生しても、給与所得と損益通算すれば給与所得の額が減るので、節税効果が生まれます。

また不動産物件は確定申告時に、一定の割合で減価償却分を経費として計上ができるので、その減価償却の数字を給与所得と損益通算して毎年の税金の支払いを圧縮する効果もあるのです。

そういったメリットを知っておくことは重要ですが、不動産会社の営業マンの中には赤字になっても損益通算すればその赤字は圧縮されるのでそれほど気にする必要はないと言ってくる人もいます。

確かに赤字は圧縮されるかもしれませんが、それはあくまで赤字の額が小さくなるだけであり黒字が生まれているわけではないのです。節税になるという言葉だけで実際には支出が増えてしまっているのに、なぜか自分の収入が増えキャッシュフローが生まれていると勘違いしてしまう人もいるのです。

そういう方は不動産によって生まれる収入をきちんと計算しているケースが少なく、得てして将来的な不動産の所得計画などのシミュレーションもずさんなことが多いです。

節税効果という言葉に惑わされて実際には利益の出ない物件をただ何年も所有する方もいるのです。結果として、投資で始めたはずなのに、気づかず赤字の垂れ流しになっている、そんな方は非常に多く見られます。

そして先ほども述べたように、赤字が出ている物件は売却価格も低くなる傾向にあります。最悪の場合、何年も売れないでひたすら持ち続けるケースに陥ってしまうこともあるのです。

節税効果が生まれる点は、あくまでも副次的な不動産投資のメリットであり節税目的に不動産を購入するのは大きな間違いであることを知っておきましょう。

そして不動産物件を購入する時には何年間でどれくらいの節税効果があり、また家賃収入が徐々に下がっていくことを織り込んだシミュレーションの収支プランをきちんと把握しておくことが、適正価格での売却を狙うには重要な要素となってきます。

築古の戸建てを購入したが需要がないので売れない

不動産物件を購入する時は、先の需要の見通しを持って購入することが重要です。

具体的に言えば出口戦略を持たない不動産物件の購入は、将来売却することができず毎年修繕費や税金などの支出が発生するだけの負債になってしまうことが多いです。

最近増えている不動産投資の手段として地方築古戸建てを安い値段で購入し、運用して行こうというものがあります。

この戦略自体はけっして間違いではありません。キャッシュフローは不動産物件の運営において大変に重要です.、購入価格を抑えてキャッシュフローの出やすい築古戸建てを購入する方が増えているのもある意味で道理だと言えるでしょう。

ただし、入居者をどうやって見つけるのか、そこが大きな問題となってきます。オーナー^チェンジで売却に出ている物件もありますが、入居者が何らかの事情で退去したり、亡くなった場合に次の入居者を見つけるのが大変困難なことも多いのです。

特に今日本は地方を中心に少子高齢化が進み、数十年後には存続が危ういと言われている自治体も多数あります。

数百万円で購入できるからといって地方都市の駅から何十分も離れているような物件を購入してしまうと、空室発生時に次の入居者が全く決まらないことも多いのです。

不動産を所有していると当然ながら固定資産税が課せられますし、物件を使用できる状態にしておくためにはメンテナンスが必要となってきます。

しかし地方に不動産物件を購入してしまうとそういったメンテナンスをすることもままならず、ただ所有し続けて毎年税金を支払うだけということも多くあるのです。

そのような事態を避けるためには不動産を売らなければいけませんが、誰も住んでいないボロボロの戸建て、しかも人口減少が続いているエリアの物件を買い取ってくれる人はそうは見つからないものなのです。

確かに入居者がいる数年間は家賃収入が手に入るかもしれませんが、一旦退去が発生してしまうと、次の入居者を見つけるのには大変な困難が伴います。多額の広告費を支払っても入居者が見つからないこともあります。

不動産物件を購入するときには自分がどれぐらいの期間保有するのか、何年後まで賃貸物件として運営するのかなど先々の計画をしっかり立てましょう。そして売却のタイミングでもきちんと需要があるような物件を選ぶのです。

賃貸の需要があるからこそ売却先も見つかり、収益物件としての価値を保ったまま売却することで、売却後の次の資産形成の手段の模索につながってくると言えます。

地方一棟マンションを購入したが修繕箇所が多く売れない

地方の築古戸建ての購入による売却の失敗と同様のケースとして、地方の1棟マンションの購入による失敗も挙げられます。

1棟マンションは区分でマンションを購入するよりも一戸あたりの購入金額を抑えられる傾向があります。また修繕計画などもオーナーである自分一人で立てやすくなるため、地方のやや古めの一棟マンションを収益目当てに購入する人も多く見受けられます。

こういうケースでは、確かに満室経営ができれば十分なキャッシュフローを確保することができるので、都心のマンションを買うよりもかなり大きな利益を生み出してくれることでしょう。

しかし、地方の人口減少はいかんともしがたい状況でありこれから先福岡など一部のエリアを除いては地方の人口が増加することはほぼ見込めません。むしろ急激な人口の減少に脅かされることになります。

そして、一棟マンションの一番の問題は修繕費が多くかかることです。1棟マンションは10年や15年に一度、水道管の交換や外壁塗装、またエレベーター設備の修理や交換など多額の費用が発生する大規模修繕があります。そこで、運営時は大規模修繕を前提に、収益計画を立てなければいけません。

修繕費はもちろん入居者の家賃や管理費から捻出されます。そのため空室ばかりの一棟マンションを購入してしまうと、入居者がいなくて家賃収入が終始トントンぐらいしか確保できないのに、大規模修繕はそのわずかな入居者の家賃や管理費で賄わなければいけない事態が発生するのです。

修繕をおろそかにしておくと、入居者の退去は続いてしまいますし、仕方ないので売却しようとしても、古めのマンションは美観、機能ともに新しいマンションよりも劣りますからなかなか買ってくれる人が見つからないのです。

その結果、売却もできずわずかにいる入居者のために、古めの物件を高額な修繕費や税金を支払いながら維持し続けるという最悪の結果に陥ってしまうこともあるのです。

マンションを買う時は例えば積立修繕費がどれくらいあるのか管理の状態はどの程度なのかをきちんと見定めておかないと、戸建て以上に多額の赤字が出てしまいます。

対策として購入時にはレントロールや修繕履歴や、積立修繕金のプール額、また入居者の細かな年齢や属性などを把握してから購入を判断しましょう。その上で入居率を80%程度と想定し、それでもきちんと利益が出る物件を買うのです。

そうすれば健全な状態で運営できるので売却時にも手離れしやすくなります。

業者のいう数字を自分で検証せずに信じてしまった

不親切な不動産業者の中には、自分たちの利益だけを求める者も残念ながら多く見受けられます。不動産は多額のお金が動く業界ですから、その成功時の利益目当てに健全な売買に取り組まない不動産業者も多く見受けられるのが現状です。

最も大きな不動産関連の不祥事といえば、積水不動産も騙された67億円の物件の地面師事件があります。

そこまで規模が大きくないとしても、小規模でも不動産業者による不正な売買活動も見受けられます。

とにかく不動産を購入する時には、不動産業者の言うこと”だけ”を鵜呑みにするのではなくきちんと自分で計算して自分が納得してから買っていただくことが重要となってきます。

例えばマンション投資を行う不動産業者の中には、「家賃はこの水準で何十年も維持できるので将来的にはキャッシュフローが生まれる」と言ってくるケースもあります。

しかし、建物の老朽化は避けられないわけですから、家賃の低下は必ずと言っていいほど発生します。周辺の競合物件が新築になれば、どうしても物件競争力が下がるために、部屋探しをしている人へのアピールのために家賃を値下げせざるを得ないケースも見られます。

その他にも予定していない修繕、また設備の故障、台風や地震といった自然災害による損害など、不動産物件を運営する上で、避けては通れない支出はたくさんあります。

そういった都合の悪い部分の支出を終始シミュレーション上では提示せずに、ただただ投資用ローンを組んで買えばしばらくはトントンで維持できて、ローン完済になれば毎月利益になるというシュミレーションを提示してくる業者は、あまり信用しない方が良いです。

むしろ何十年もローンを支払って購入するよりも、ある程度一定の期間経過したら購入時と同じ程度の価格で売却して、保有期間分の家賃収入を収益の目的としていくほうが、リスク面では安全と言えるでしょう。

20年後、30年後どうなっているのかは誰にもわからないものです。それよりも、ある程度状況を推測しやすい5年や10年を区切りのタイミングにしたほうが良いでしょう。

サブリースで物件を購入したが収入が下がり契約上売るにも売れない

サブリースも、最近増えている売却時のトラブル源です。

サブリース契約とは、自身の所有する物件を個人ではなく不動産業者に貸し出し、自分は入居の有無に関わらず一定の家賃収入を支払ってもらえるという契約です。空室でも家賃の支払いが行われるので、物件オーナーにとっては、都合の良い契約に見えますが実際は集客力のある新築物件のうちでも2割ほどの手数料を取られるのえ、収益を減らすだけの契約になってしまうことも多いです。

さらに大きな問題として、サブリース契約は売却時の足かせになることが挙げられます。

サブリース契約を解約しようとすると、多額の違約金を支払わなければいけないことがあります。

そのためサブリース契約を残したまま売却することになるのですが、サブリースにより家賃収入が減った状態で売却をすることになるので、まず売却価格が下がってしまうことがあります。そしてサブリース契約を結んでいると、物件を自分で運営できないため嫌がる不動産投資家も多くいます。結果的にサブリース契約がついているだけで物件の購入選定先から外されてしまうのです。

そもそもサブリース契約を結んでいると、一定期間ごとに高額な修繕をしなければいけないなど、サブリース業者によって都合の良いオプションが付与されていることが多くあります。収益面で見ればサブリースは収益の安定性にはつながりますが、収益を増やすという面ではマイナスな点が多いのです。

あえて自分にとって不利な契約を選んだ結果、売却時にも価格が下がったり購入先が見つからないという状態は絶対に避けたいものです。

もしサブリース契約付きで物件を運用したいという方は、サブリース契約の解約のためにはどれくらいの違約金を支払う必要があるのか、また売却時に契約を外せるのかなど気になる問題点はチェックしてからサブリース契約を結びましょう。

収益不動産売却査定サイト

収益物件の売却でよくある質問

収益物件を売却する際には、疑問点を事前に解消しておくことが大切です。

「ローンが残っている状態でも物件を売却できるのか」「確定申告が必要なのか」「消費税がかかるのか」など、このような疑問を解決することで、売却プロセスをスムーズに進めることができます。

疑問が残っていると、売却手続きがスムーズに進まず、好条件での取引チャンスを逃してしまう可能性があります。

ここでは、収益物件の売却でよくある質問について見ていきましょう。

ローンが残っている収益物件でも売却できる?

収益物件の売却は、ローンが残っていても可能です。売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消します。

売却前にローンの残高を確認し、売却代金で完済可能かを把握しておくことが必要です。以下の方法で残債を確認できます。

・金融機関から送られてくる残高証明書を確認する

・不動産投資ローンの返済予定表を確認する

・引き落とし口座の明細を確認する

・金融機関に直接問い合わせる

また、売却代金の見込み額は、複数の不動産会社に査定を依頼するなどして把握できます。査定に関しては、最も精度の高い訪問査定がおすすめです。担当者が直接現地を調査して査定するため、AI査定や机上査定と比べて、より正確な金額が見積もられます。複数社に査定を依頼する際は、一括査定サービスを利用することで、効率的に進めることができます。

収益物件を売却する際に注意したいのが、ローン残高が売却代金を上回っている場合です。

・ローン残高が売却代金を上回っている(オーバーローン)

・ローン残高が売却代金を下回っている(アンダーローン)

アンダーローンの場合、売却代金でローンを完済できるため、特に問題はありません。しかし、オーバーローンの場合は、売却代金だけではローンを完済できないため問題です。ローンを完済できないと、物件の売却が難しくなります。

そのため、オーバーローンの場合は、売却代金だけでは足りない分を他の方法で補うことが必要です。例えば、貯金を使ったり、親族からの借り入れ、他のローンを利用するなどの方法が考えられます。不足分を補うことができれば、ローンを完済し、収益物件を売却することが可能です。 このように、収益物件はローンが残っていても売却できますが、オーバーローンの場合は不足分を補う必要があることを理解しておきましょう。アンダーローンかオーバーローンかをできるだけ早く確認することをおすすめします。

収益物件を売却したら確定申告は必要?

マンションやアパートなどの収益物件を売却して利益が出た場合は、確定申告が必要です。確定申告とは、1年間(1月1日〜12月31日)に発生した所得とそれにかかる所得税を確定し、申告と納税を行う手続きのことです。確定申告の期間は、例年2月16日〜3月15日までとなっています。

収益物件の売却で利益(譲渡所得)が発生すると、譲渡所得税が課されます。譲渡所得税の税率は、物件の所有期間によって異なり、詳細は以下のとおりです。

物件の所有期間税率
5年超(長期譲渡所得)20.315%
(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
5年以下(短期譲渡所得)39.63%
(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)
出典:国税庁「土地や建物を売ったとき

収益物件を売却すると、税務署から確定申告に関するお知らせが届きます。もし、売却によって利益が出ていない場合は、その旨を回答してください。

確定申告に必要な書類は、以下のとおりです。

・確定申告書

・譲渡所得の内訳書

・登記簿謄本(登記事項証明書)

・売買時の資料(契約書、経費の領収書など)

確定申告書や譲渡所得の内訳書は、以下の方法で入手できます。

・国税庁のホームページからダウンロード

・税務署の窓口で入手

・確定申告相談会場で入手

確定申告書には所得金額を記入し、譲渡所得の内訳書には売却した物件の所在地、売却価格、購入価格、費用などを記載します。登記簿謄本(登記事項証明書)は、不動産の登記内容が記載された書類です。この書類は、法務局で入手でき、窓口での取得のほか、郵送やオンライン請求も可能です。

また、確定申告を作成する際には、売買契約書や経費の領収書などが必要になります。領収書などがなければ取得費などを正確に把握できず、経費が実際よりも少なく見積もられ、より多くの税金が課される可能性があります。

確定申告書の提出方法は、以下の3つです。

・e-Tax(国税電子申告・納税システム)で申告

・税務署に郵送

・税務署の窓口に提出

納税が必要な場合は、確定申告期間内に以下の方法で税金を納付します。

・現金納付

・口座振替

・インターネットバンキング

・クレジットカード納付

・スマホアプリ納付

・コンビニ納付など

確定申告が必要なのに期間内に申告をしなかった場合は、無申告加算税や延滞税などが課される可能性があるため注意が必要です。

税金罰則
無申告加算税本来納付すべき税額のうち、50万円までは15%、50万円を超える部分については20%の加算税が課されます。
延滞税期限の翌日から納付日までの期間によって税率が異なります。延滞税の最高税率は年14.6%です。

確定申告が初めての場合、準備や作成に時間がかかることがあります。また、申告内容を誤る可能性もあります。確定申告に不安がある場合は、税理士に相談するなどして、詳細なアドバイスを受けた方がよいでしょう。

収益物件を売却したら消費税はかかる?

収益物件の売却自体には消費税はかかりません。例えば、売却益(譲渡所得)が1,000万円出たからといって、その利益には別途消費税を支払う必要はありません。

ただし、売却時に発生する手数料や経費には消費税がかかります。例えば、仲介手数料やハウスクリーニング費用、司法書士報酬などが該当します。

仲介手数料は「売却代金×3%+6万円+消費税(速算式)」で計算されるため、消費税も負担しなければいけません。

収益物件を売却する際には、手数料などに消費税がかかることを理解しておきましょう。

まとめ

不動産物件を相場通りの価格で失敗せず売却するためには、様々な知識を身につけておく必要があります。

売却時の価格の算出には3通りの計算方法があり、それぞれの評価によって価格が異なってくる場合もあります。また税金も売却のタイミングで異なってくるので、不動産をどれぐらい保有するのか、そしてどのタイミングで売るのかなどはあらかじめ購入時にプランを立てておくと売却時の失敗を起こしにくくできます。

そして、そもそも失敗を防ぐためには、将来も需要があり売れるような物件をきちんと購入するということが、売却時の失敗を防ぐことにつながるのです。

このように、収益物件の売却には様々な要素が関わってきます。ぜひこの記事を参考に、最適な売却戦略を立ててみてください。 そして信頼できる不動産会社と関係を築き、きちんと売却する人の立場に立って売却活動を行ってくれる不動産会社を選ぶようにしましょう。

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